《若手記者・スタンフォード留学記 3》日本人の英会話を改善する3つのヒント


この例に限らず、リンキングによって発音が変わる例が英語には多く存在します。その法則を押さえておくと、英語の話す・聞くが随分楽になります。(英語版しかありませんが、米マグロウヒル社の「Sound Concepts」は発音改善のためにお勧めのテキストです)

暗記をバカにすることなかれ

最後に、英語の総合力を高める上で一番効率が良いのは、やっぱり暗記です。

私も以前は、ネイティブの学生に囲まれ、英語のテレビを見ていれば、自然と正確な英語が口から出てくるようになると思っていたのですが、それは幻想でした(当たり前ですが)。

この方法は吸収力の高い子供であれば有効かもしれませんが、大人には無理です。それよりも、とにかく多くの英文を暗記するのが、英語上達の近道です。当初は、私も暗記勉強法に疑心暗鬼だったのですが、その効果たるや恐るべし。暗記リストが積み上がってくるにつれ、自然と英文が口から出てくるようになってきたのです。

しかし、暗記は退屈です。「中学時代の教科書を暗記せよ」という意見もありますが、いい年をしてそんなことやってられません。その昔、夏目漱石が、「英語の勉強が漢文に比べてつまらない」と嘆いたのも、英語のテキストの中身があまりに軽く、含蓄にかけていたからです。

では、どうすればいいのか?

自分の興味のある分野の対談や講演、ニュースを聞けばよいのです。そして、大事なところ、うまい言い回しを記録し、それをひたすら暗記するのです。すると、自分だけの言語リストができたようで、何か嬉しくなってくるので、勉強が継続しやすくなります。やはり、楽しくないと勉強は長続きしません。

最近の私のお気に入りは、ニュースウィーク国際版編集長ファリード・ザカリア氏の米国外交をテーマにした番組(CNNのGPS)と、米国営放送PBS(日本のNHKに相当)で放映されているチャーリー・ローズ氏の対談番組です(ともにウェブで日本から視聴可能)。世界の一流の政治家、学者、ジャーナリスト、専門家の話がタダで聴き放題です。

アメリカにも下らないTV番組は多々ありますが、討論・対談番組のレベルの高さには感心させられます。とりわけ、PBSの番組は質が高い。最近も、日本の自衛隊や甲子園についてのドキュメンタリーが放送されていましたが、その切り口の鋭さに感心しました。

PBSのサイトには、音声、動画とともにニュース原稿も公開されていますので、ディクテーション(英語を聞き取ってそれを書き写す訓練)や、シャドーウィング(ネイティブスピーカーの会話を影のように繰り返す訓練)といったトレーニングに最適です。最近は、英「エコノミスト」誌、「インターナショナル・ヘラルド・トリビューン」紙も音読サービスを提供しています。

この英語の一流の題材を基にした暗記法であれば、知的好奇心を満たしながら、英語の話す・聞く・書く能力とともに、専門知識や教養も高めることができます。しかも、この勉強法は日本でも簡単に実践できます。

私の場合、本文で紹介した3つのポイントを意識し始めてから、英語のリスニング・スピーキングがすごく楽になってきました。(未だにアメリカ人学生の早口の議論には半分もついていけませんが)。

以上、一留学生のささやかな経験ですが、これから留学する、あるいは海外に赴任する方などのご参考のなればと思います。

佐々木 紀彦(ささき・のりひこ)
1979年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、東洋経済新報社で自動車、IT業界などを担当。2007年9月より休職し、現在、スタンフォード大学大学院修士課程で国際政治経済の勉強に日夜奮闘中。

 

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