
巨大な卵を思わせる白い流線形のフレームに身を滑らせ、ふわふわのベッドに横たわる。やがて天蓋部のモニターに自分の呼吸と心拍数、換気量が表れた。
マットレスがゆっくりと傾き、上半身が沈み込んでいく。体の状態を検知し、自動で最適な睡眠環境を整えてくれるのだ。約3分間の短いデモ体験だったが、記者は終盤に危うく寝入りかけた。耳元で鳥のさえずりが聞こえ、脚部は優しく震える。自然な起床を促す仕掛けによって、スッと現実へと引き戻された。
揺りかごに包まれるような、遠い赤子の頃の記憶──。それを喚起させたのは、大阪・関西万博で展示中のコンセプトベッドだ。
具現化を支える電子部品業界
企画したのは、モーターなどの各種部品を幅広く手がけるミネベアミツミ。同社製の荷重センサーや振動装置が複合的に機能し、文字どおり夢のような寝心地をかなえた。実用化すれば熟睡の割合が増え、寝る時間は半分で済むかもしれない。さらに将来、見たい夢を自由に選べるようになる可能性もあるという。