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小田急vs西武、50年ぶり「箱根山戦争」のリアル。日本有数の観光地におけるインバウンド囲い込みを目指し、両社が積極投資を計画

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しのぎを削る小田急と西武
小田急と西武は、箱根エリアにおける観光事業でしのぎを削っている(図表:各社資料をもとに東洋経済作成)

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少子高齢化を背景に輸送人員の減少が懸念される鉄道業界。関東の私鉄大手はいち早く不動産や小売りといった非鉄道事業の展開を強化してきたが、各社特有の戦略を掲げることで、今後の持続的な成長を目論む。大手私鉄の中でも独自色の強い、小田急電鉄と西武ホールディングスの成長戦略を深掘りする。

カンカン照りの暑さが続く平日にもかかわらず、駅のコンコースは国内外の観光客であふれかえっていた。2025年7月下旬、神奈川県箱根の玄関口である箱根湯本駅を訪れたときの光景だ。

日本有数の観光地「箱根」をめぐり、関東の私鉄大手2社が今、新たな動きを見せている。

両社とも箱根の重要性を強調

東京西部や神奈川を地盤とし、箱根や江の島、鎌倉などを沿線に持つ小田急電鉄。同社は2026年度までの中期経営計画で、観光需要の取り込みを事業強化施策の一つに据えている。新宿駅を観光ルートのハブ(拠点)とし、箱根や湘南といった地域で観光客を誘致する構えだ。

小田急の鈴木滋社長は「箱根には長年にわたり投資を継続しており、今後も観光をグループの成長エンジンとして展開していく」と語る。

西武グループの伊豆箱根バスは天候不順で災害に見舞われ小田急グループのロープウェイが運休した際には、その代替として運行することもある(写真:西武ホールディングス)

一方、東京や埼玉を地盤とする西武ホールディングス(HD)も、2026年度までの中期経営計画で、箱根や軽井沢などでのリゾート開発を本格化させることを成長戦略として掲げている。

西武HDの西山隆一郎社長は「われわれは創業時から箱根と軽井沢をリゾート開発の拠点としてきた。歴史的な経緯もあり、重点エリアであることは変わらない。箱根はいまやリゾート地としてメッカになっており、インバウンドの人気もすごい」と、箱根の重要性を強調する。

インバウンドを中心とする旺盛な観光需要に照準を定める小田急と西武。箱根エリアにおける両社の戦いといえば、およそ50年前に繰り広げられた壮絶なバトルは鉄道業界では語り草となっている。

「箱根山戦争」――。1950年代から1960年代後半にかけて繰り広げられた、日本の観光開発史における企業間競争の象徴とも言える「縄張り争い」だ。

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