TSMCを熊本県に誘致することが成功し、日本各地で2匹目のどじょうを狙った地方自治体における半導体企業誘致の動きが活発化している。そこで半導体企業誘致のメリットとデメリットを冷静に考えてみたい。
近年、半導体産業の重要性が再認識される中で、日本政府は「半導体立国」戦略を掲げ、国内生産基盤の強化に乗り出している。これに呼応する形で、地方自治体が半導体企業の誘致に積極的に動いている。雇用創出、税収増加、関連産業の波及効果など、地域経済へのインパクトが期待されるからだ。
しかし、企業誘致は地方創生の「手段」であって「目的」ではない。誘致後の行政対応、インフラ整備、企業との信頼関係構築、そして撤退リスクへの備えなど、自治体の戦略的な取り組みがなければ、期待は失望に変わりかねない。今回は、熊本県・宮城県・新潟県の3つの事例を通じて、半導体企業誘致の現実と課題を検証したい。
税収増だがインフラ不足も露呈
台湾のTSMCが熊本県菊陽町に進出したことは、日本の半導体産業再興の象徴的出来事として広く報道された。2024年には第1工場が稼働し、2025年には第2工場の建設も始まった。
これによって、雇用が生まれて固定資産税等の増収もあり、菊陽町では2025年度より国からの地方交付税を受けない不交付団体になる見通しである。給食費の無償化など住民サービスの拡充も実現している。
一方で人口流入と通勤・物流需要の増加により、“これまでも”悩まされていた交通渋滞が一層深刻化。熊本市は世界交通渋滞ランキングで上位に入るほどの混雑に悩まされている。これに対し、熊本県は新道路整備や鉄道構想などインフラ強化に動き出しており、誘致後の行政対応が地方創生の成否を左右することを示している。




















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