一連の輸送トラブルを受け、記者会見で陳謝するJR東日本の喜勢陽一社長(右、2月10日。写真:時事)
深刻な輸送トラブルが止まらないJR東日本。1月16日、作業ミスによる停電で、山手線や京浜東北線が8時間以上にわたってストップ。東海道線など747本が運休し、通勤、通学客ら約67万人の足を直撃した。その2週間後の30日には、常磐線上野駅構内で架線切断による停電が発生。156本に最大約7時間の遅れが出て、81本が運休し、約23万人に影響した。さらに2月2日、京葉線八丁堀駅でエスカレーターが焼ける火事があり、同線は一時、全線で運転を見合わせた。
相次ぐトラブルを受け、金子恭之・国土交通相は翌2月3日、「JR東日本は公共交通機関としての自覚を持ってほしい」と苦言を呈し、国土交通省はJR東日本に対し、原因究明と再発防止策の検討を進めるよう行政指導を行った。だが、そのわずか5日後の8日深夜、宇都宮線・古河駅(茨城県)―野木駅(栃木県)の下り線の架線が切れ、またもや停電が発生。運休は9日夕方まで続き、約19万人に影響した。前述の山手線・京浜東北線、常磐線の停電事故と合わせると3つの輸送トラブルによる影響人員は100万人以上に上り、同社の喜勢陽一社長(61)は10日に開かれた定例会見で、「経営の根幹に関わる事態として重く受け止める」と謝罪した。
会見で喜勢社長は、3つの停電事故の原因について説明するとともに、今後の対策として、「修繕費の増額」や「技術系社員150人の増員」などを打ち出し、改めて「鉄道事業者として、JR東日本のトップとして心からお詫びを申し上げます」と陳謝した。
この日の会見の模様はYouTubeにもアップされたのだが、それを視聴したという同社の技術系中堅社員は、喜勢社長の姿勢について「謝罪すれども反省なし」と喝破した。そして、会見で打ち出した修繕費の増額や技術系社員の増員などの対策についても「絵に描いた餅」と一蹴したのだ。
デジタル連載「過信―JR東日本がもくろむ『労組消滅』」の第10回では、3つの輸送トラブルの内情を知る技術系社員に、2月10日の定例会見での喜勢社長の発言内容を検証してもらうことで、同社で相次ぐ停電事故や輸送トラブルの背景を明らかにする。
この技術系社員を仮にA氏としておこう。A氏は高校卒業後、1990年代後半にJR東日本の電力部門に採用された。JR東日本における「電力」とは、変電所から車両や駅などに電気を供給する、まさに今回の一連の停電事故に直接関係していた部門(系統)である。
入社後、首都圏の「電力区」(現在の「電力技術センター」)に配属されたA氏は、設計や管理業務に従事するだけでなく、「電力メンテナンスセンター」などで、架線検査や交換などの夜間作業に当たるなど、約30年にわたって一貫して“電力畑”を歩み続けてきた40代後半の技術者だ。A氏が語る。
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