ここ数年にわたって新幹線や在来線での輸送トラブルが頻発しているJR東日本。2024年9月と25年3月には、東北新幹線「はやぶさ・こまち」の連結器が走行中に外れるという、同社発足以来初めての事象が相次いで起こった。また25年6月には最新型車両「E8系」で故障が発生し、宇都宮―那須塩原間で立ち往生した。
今年に入ってからは、在来線でのトラブルが続発する。1月16日には作業ミスによる停電事故で、山手線や京浜東北線が8時間以上にわたってストップ。その2週間後の同月30日、今度は常磐線上野駅構内で、架線切断による停電が発生した。そして、翌2月には宇都宮線でまたもや架線切断による停電事故が起こったのである。
3つの停電事故による影響人員は100万人以上にのぼり、JR東日本は3月18日、「首都圏で相次いだ輸送トラブルでグループの信頼を著しく損なった」として、喜勢陽一社長(61)ら4人に社内処分を行った。
これら相次ぐ輸送トラブルの背景として、安全問題をはじめ同社の経営全般を現場からチェックする「労働組合」の不在を指摘するJR東日本の元幹部やOBは少なくない。
同社では18年、国鉄分割・民営化、JR発足以降30年余にわたって社員の約8割が加入していた過半数労働組合「JR東労組」(東日本旅客鉄道労働組合)が崩壊。それと同時に社員の親睦団体「社友会」が誕生した。それ以来、今日に至るまでの8年間にわたって、JR東日本は、この社友会を過半数労組に代わる「経営のパートナー」として育成してきたのだ。
本連載ではこれまで、“疑似労働組合”のように振る舞う社友会の実態や、労組より社友会を優遇するJR東日本の労務政策の現状を明らかにしてきた。また、「労組候補vs.社友会候補」の構図で争われる同社の「過半数代表選挙」に、会社側が水面下で関与していた事実や、社友会に法的担保を付与しようとする同社の政治的な動きについても報じてきた。だが、JR東日本は今後も、社友会を「経営のパートナー」とする労政を変えるつもりはないようだ。
それにしても、JR東日本の経営陣はなぜ、かたくななまでに「過半数労働組合をつくらないし、つくらせない」(同社関係者)のだろうか……。彼らの“心情”を理解するには、国鉄分割・民営化、JR発足以降30年余にわたってこの会社が歩んできた「苦悶の労政史」(同前)を振り返る必要があるだろう。
デジタル連載「過信―JR東日本がもくろむ『労組消滅』」最終回の前編は、「革マル派」への対応に苦慮し続けてきたJR東日本の労政史を振り返る。
話は40年前にさかのぼる。
旧国鉄時代、過激な闘争方針で知られた国鉄動力車労働組合。かつて「鬼の動労」と呼ばれたその組織を率いていたのが新左翼セクト、警察当局からは極左暴力集団と見なされる「革マル派」(革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派)のナンバー2といわれた松崎明氏(故人)だった。
国鉄分割・民営化前年の1986年、動労委員長だった松崎氏は、それまでの分割・民営化反対の方針を百八十度転換。賛成に転じ、激しく敵対してきた「鉄道労働組合」(鉄労)などの他労組と組み、87年に、JR東労組やその上部団体である「JR総連」(全日本鉄道労働組合総連合会)を結成した。JR発足後は、JR東労組の委員長に就くとともに、JR総連の副委員長を務め、以降15年以上にわたって両組合の実質的なトップとして君臨してきた。
今なお色濃く残る“動労の血”
このため、JR東労組をはじめとするJR総連傘下労組は今なお、松崎氏を信奉し、旧動労の血を色濃く残している。また警察当局も、これらの労組と革マル派との関係を次のように認識している。
「警察では、平成8年以降、革マル派の非公然アジト28か所を摘発し、これらのアジトの一部から押収した資料を分析するなどした結果、JR総連及びJR東労組内において革マル派活動家が影響力を行使し得る立場に相当浸透していると見ている」(2023年5月22日、参議院決算委員会での国家公安委員長答弁)
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