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〈老舗の葛藤〉1階は書店?カフェ?三省堂書店が悩みに悩んだ"神保町本店建て替え計画"の知られざる内幕。創業家社長「あえてこの戦い方を選んだ」

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2026年3月19日に開業する三省堂書店の神田神保町本店。書店は3フロアにまたがり、3階にカフェを併設。高層階にはオフィスが入居する予定だ(画像:三省堂書店)
書店大手の三省堂書店は12月1日、2026年3月に神田神保町本店を開業すると発表した。街のランドマークとして親しまれてきた旧本店は、建設から約40年が経ち、建物が老朽化していたことから3年前に一時閉店。神田小川町で仮店舗を営業しつつ、新本店の開発を進めてきた。
書店の設計が初となる建築家・長谷川豪氏を起用し、1階には渓谷のような売り場を配置するなど、全3フロアに個性的なデザインを取り入れた。書店としての面積は600坪と、旧本店の約7割に縮小。ビルの4階には、神保町エリアに本社を構える集英社系のキャラクターグッズを扱う「THE ジャンプショップ神保町」が入居し、5階から13階はオフィスとして貸し出す。
紙の出版物の市場規模が落ち込む中、書店の旗艦店ビルを再開発するに当たり、内部でどのような議論が交わされてきたのか。また、今後の三省堂書店をどう経営していくのか。創業家5代目の亀井崇雄社長に聞いた。

神経をすり減らしながら検討してきた

――直前まで登壇していた新本店の説明会では、建築費用高騰などのハードルを振り返りつつ、「時には判断が鈍ることがあった​」「本来の理念を見失いそうになるたびに​」といったフレーズが印象的でした。

予算とにらめっこして、金額面でいろいろと調整すると同時に、2026年の新学期という(開業時期の)締め切りもずらしたくなかった。神経をすり減らしながら、いろいろな設計変更も経て、何とか納得のいく形を目指してきた。

――再開業する本店の最大のアピールポイントは何でしょうか。

長谷川豪さんの特徴的な店舗内装だ。既存の業者は経験があり、仕事が進めやすいという面はあるが、前と同じ店舗になってしまう。新しいことにチャレンジする店になるので、お付き合いのなかったところを念頭に探していた。

まずは日本全国の有名な書店や図書館を見てもらい、勉強してもらった。長谷川さんと書店を回る中で、例えば斜めの書棚に「これが面白い」と食いつくなど、われわれとは視点がまったく違った。こういった食いつきが、今回の設計に生かされている。

ほかの書店では見たことのないような景色になるので、本に興味がない方にも来てもらいたい。

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