――山内さんが主宰を務めた「鉄道運賃制度等のあり方に関する勉強会」が昨年9月に報告書をまとめ、物価変動を柔軟に反映できる運賃制度の検討を提言しました。勉強会を立ち上げた理由は何だったのでしょうか。
最大の理由は、既存の国(国土交通省)の中での議論から一歩踏み出し、事業者や外部の専門家と、より「自由で活発な議論」を行う場が必要だと考えたことだ。従来の議論は、鉄道事業法という枠組みの中でのみ行われてきた。しかし、今の鉄道を取り巻く環境は、法制度の細部を突き詰めるだけでは解決できない段階に来ている。
振り返れば、1987年のJR発足から40年弱。日本経済はバブル崩壊後の「失われた30年」を経て、デフレが常態化していた。鉄道運賃もその間、実質的な改定は行われてこなかった。だが今、日本は明らかに「経済の変曲点」に立っている。
インフレの兆候、金利の上昇、そして深刻な人口減少。こうした長期的なトレンドが将来にどう影響するのか。特に「サステナビリティー(持続可能性)」という言葉で強調しているが、鉄道が日本の交通インフラとしての役割を果たし続けるためには、これまでの延長線上ではない議論が必要だと確信している。
だからこそ、国交省だけでなく、エネルギーのような他の公益事業の関係者、金融の専門家、さらには消費者団体の意見も交え、民間主導の勉強会として「耳の痛い意見」も含めて情報を集約した。
将来の投資などをどう反映させるか
――日本の鉄道運賃の根幹には、事業の運営に必要な「原価(コスト)」に一定の「報酬(利益)」を上乗せして上限運賃を定める「総括原価方式」があります。これまで果たしてきた役割をどう評価していますか。
まず大前提として、鉄道は独占性が高く、生活に不可欠なインフラであるため、何らかの公的介入や規制を受けるのは妥当だ。総括原価方式は、その有力な手法の一つとして機能してきた。
誤解してはならないのは一口に総括原価方式といっても、事業の性質によってその中身は大きく異なるということだ。
NHKの受信料も電気料金も総括原価をベースにしているが、計算の仕組みや性格は別物だ。鉄道には鉄道のやり方があり、これまでは「公共性」と「事業性」のバランスを保つ装置として一定の評価はできる。





















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