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ヤマト運輸・宅急便「実質値下げ」新運賃の深謀遠慮、一部は「ゆうパック」より安値に、価格競争の懸念は

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ヤマト運輸が個人向け宅急便の新運賃を導入。同じ都道府県内(沖縄県を除く)発着分を実質的に値下げした(撮影:今井康一)

トラックドライバーの残業を規制する「2024年問題」で、待遇の低さが注目された物流業界。人手不足を少しでも解消しようと、各社は給与アップに取り組む。その原資を確保するため、業界を挙げて運賃の値上げを進めてきた。

運送会社は長らく荷主に買いたたかれる立場にあったが、ようやく適正な価格での取引を望める状況になりつつある。そんなさなか、宅配首位のヤマト運輸は11月、個人向け宅急便の新運賃を導入。同一都道府県の発着分を実質的に値下げした。

一見すると、トレンドに逆行する動きとも取れる。ほかの物流大手社員からは「値上げをやりにくくなる」との批判も上がる。ただ、ヤマト運輸は「運賃適正化の一環であり、コストに応じた見直しだ」と説明。一体どういうことなのか。

個人客が増えれば採算良化

ヤマト運輸は従来、個人向け運賃を地帯別に設定していた。例えば関東発の荷物であれば、東京や山梨、群馬など8都県の届け先で料金は均一だった。今回はこれを細分化し、同じ都道府県内(沖縄県を除く)で発着する場合の区分を設けた。

小型の「60サイズ」であれば、東京発着で940円だったところ、790円に。競合の日本郵便が提供する「ゆうパック」の同サイズ、同区間より30円安くなった。東洋経済の取材に対し、ヤマト運輸の櫻井敏之常務(宅急便事業統括)は「新しい個人客を取り込むための施策だ。郵便局を意識していない、ということはない」と明言する。

ヤマト運輸の取り扱い荷物数は約23億個(25年3月期)に上り、その約9割が法人契約とされる。一般的に法人契約と比べて、個人客の運賃のほうが割高だ。個人客の割合が増えれば、宅急便事業の全体としての単価は上昇し、採算性も良くなるというわけだ。

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