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ニデックを支配してきた「永守イズム」の壮絶、「計画未達は罪悪であり大恥であり大不幸である、赤字は犯罪である」を叩き込んだ結果起きること

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社内で配信された永守氏のメッセージ。「未達は悪、赤字は犯罪」と記されている(筆者撮影)

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2022年秋、東洋経済オンラインを含む複数のメディアが旧日本電産(現ニデック)で社員の大量退職が相次いでいることなどを報じ、その背景に創業者で当時会長だった永守重信氏の苛烈な社員教育や業績目標の設定があったことを指摘した。
日産自動車副COO(最高執行責任者)から旧日本電産社長に招かれた関潤氏(現台湾・鴻海精密工業のEV事業の最高戦略責任者)はこうした社風を改めようと奮闘したが、逆に永守氏の叱責を受け、会社を去るに至る。改革の芽はなぜ、摘まれてしまったのか。22年当時、旧日本電産で何が起きていたのか。本連載で改めて掘り起こしながら、今日の状況を招いた病根を検証する。
特集第1回記事【ニデック不適切会計問題の真相、岸田社長も認めた「短期的収益追求」の病根とは何か、2022年にグループ内でいったい何が起きていたのか 】に続く第2回は、永守氏の経営哲学の問題にフリージャーナリストの竹中明洋氏が迫る。

2022年。日本電産(現ニデック)の朝は早かった。トップの永守重信会長(現グローバルグループ代表)が午前6時50分には出社するため、役員も自ずから7時までには出社することになる。

そして午前8時半には社歌が流れるなか、役員も含む全社員が職場の清掃を始める。「整理、整頓、清掃、清潔、作法、躾(しつけ)」の6Sを一流企業の証しとして重視するニデックでは、毎朝の清掃は社員教育のためであるが、同時にコスト削減のためでもあった。コスト意識は徹底していて、役員といえども個室はない。

当時の関潤社長は8時半近くになって出社することが多く、永守氏がこれを難詰したところ、「これでも日産時代より早いくらいです」と反論。激怒した永守氏がほかの役員の出社時間まで調べる騒動となったことは社内ではよく知られている。

掃除が済むと朝礼があり、その後、永守氏の経営哲学をまとめた『挑戦への道』の輪読をユニットごとに4、5人で行う。当時の社員のバイブルである『挑戦への道』は1冊ごとにシリアルナンバーが振られ、退職時には人事部に返さなくてはならない。そのため原本の入手はできなかったが、筆者はそのエッセンスをまとめた文書を入手した。

「未達は悪、赤字は犯罪」

それによると、『挑戦への道』が社員に説くのは、「16時間働けば倍仕事ができる」「仕事のストレスは仕事で癒す」「1番以外はビリ」といったハードワークの推奨から、「不良品は不良社員が作る」「トップが自ら一番努力し、頑張っている背中を社員に見せろ」といった心構え、さらには「できる人間の3要素は、声がでかい、出勤時間が早い、食べるのが早い」といった、やや根拠が不明のものまであり、要は社員としてあるべき姿が平易な言葉でまとめられている。

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