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ニデック不適切会計問題の真相、岸田社長も認めた「短期的収益追求」の病根とは何か、2022年にグループ内でいったい何が起きていたのか

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​2020年2月4日に開かれた日本電産(当時)の社長交代会見。これをきっかけに日本電産の改革が進むとみられたが・・・。(撮影:ヒラオカスタジオ)

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2022年秋、東洋経済オンラインやダイヤモンド・オンラインなどが旧日本電産(現ニデック)で社員の大量退職が相次いでいることなどを報じ、その背景に創業者で当時会長だった永守重信氏(現グローバルグループ代表)の苛烈な社員教育や業績目標の設定があったことを指摘した。日産自動車副COO(最高執行責任者)から旧日本電産に招かれて21年6月にCEOとなった関潤氏(現:鴻海精密工業最高戦略責任者)はこうした社風を改めようと奮闘したが、逆に永守氏の叱責を受け、降格のうえ22年9月に会社を去るに至っている。
こうした内情を報道したメディアに対し、旧日本電産は訴訟や警告という手段を取った。一方で、永守氏の経営手法を称賛するようなメディアに積極的に登場し、自説をとうとうと語っていた。少なくともその語り口や紙面からは、足元で起きていた重大なコンプライアンス上の問題を顧みる様子はうかがわれなかった。
改革の芽は、なぜ潰されてしまったのか。22年当時、旧日本電産で何が起きていたのか。本連載で改めて掘り起こしながら、今日の状況を招いた病根を検証する。

「株主や投資家の皆様に多大なご迷惑とご心配をおかけしていることを深くお詫び申し上げる」

11月14日、2025年4〜9月期決算会見に姿を現した岸田光哉社長は、深々と頭を下げた。9月に不適切な会計処理について第三者委員会を設置して以降、岸田社長が公の場で説明したのは初めてのことだった。

同社の決算会見は「招待制」。限られたメディアとアナリストだけが参加できる立て付けで運営している。東洋経済記者は取材を通じて会見日時と場所を把握し、「招待」を受けないまま会場に向かった。

受付で記者が名刺を渡すと、すんなり会場に入ることができた。スタッフは丁寧に対応し、資料も受け取ることができた。大きな会見会場はがらんとした印象だった。

5月以降、何が起きたのか。やや長くなるが、時系列に沿って、公表された「疑惑」を整理しておこう。

発端は「海外子会社の監査遅延」

発端はニデックが5月29日に発表した「海外子会社の監査遅延」である。ニデックが会計監査人の報告を受領しておらず、6月20日の定時株主総会までに監査報告がなされるかどうかが「未定」というのだ。

株主総会2日前の6月18日になると、今度は監査報告を受領できないために有価証券報告書の提出を延期すると発表。リリースでは、イタリア子会社のニデックFIRインターナショナルで製造したモーターの原産国申告に誤りがあり、未払い関税が発生した可能性があるためとした。

次ページ株主総会の主な話題はTOBに関することだった
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