【独自】ニデックを支配してきた「永守イズム」の壮絶、「計画未達は罪悪であり大恥であり大不幸である、赤字は犯罪である」は何をもたらしたか

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社内で配信された永守氏のメッセージ。「未達は悪、赤字は犯罪」と記されている(筆者撮影)

2022年秋、東洋経済オンラインやダイヤモンド・オンラインなどが旧日本電産(現ニデック)で社員の大量退職が相次いでいることなどを報じ、その背景に創業者で当時会長だった永守重信氏(現グローバルグループ代表)の苛烈な社員教育や業績目標の設定があったことを指摘した。

日産自動車副COO(最高執行責任者)から旧日本電産に招かれて21年6月にCEOとなった関潤氏(現:鴻海精密工業最高戦略責任者)はこうした社風を改めようと奮闘したが、逆に永守氏の叱責を受け、降格のうえ22年9月に会社を去るに至っている。

こうした内情を報道したメディアに対し、旧日本電産は訴訟や警告という手段を取った。一方で、永守氏の経営手法を称賛するようなメディアに積極的に登場し、自説をとうとうと語っていた。少なくともその語り口や紙面からは、足元で起きていた重大なコンプライアンス上の問題を顧みる様子はうかがわれなかった。

改革の芽は、なぜ潰されてしまったのか。22年当時、旧日本電産で何が起きていたのか。

午前6時50分に出社

2022年。日本電産(現ニデック)の朝は早かった。トップの永守重信会長(現グローバルグループ代表)が午前6時50分には出社するため、役員も自ずから7時までには出社することになる。

そして午前8時半には社歌が流れるなか、役員も含む全社員が職場の清掃を始める。「整理、整頓、清掃、清潔、作法、躾(しつけ)」の6Sを一流企業の証しとして重視するニデックでは、毎朝の清掃は社員教育のためであるが、同時にコスト削減のためでもあった。コスト意識は徹底していて、役員といえども個室はない。

当時の関潤社長は8時半近くになって出社することが多く、永守氏がこれを難詰したところ、「これでも日産時代より早いくらいです」と反論。激怒した永守氏がほかの役員の出社時間まで調べる騒動となったことは社内ではよく知られている。

掃除が済むと朝礼があり、その後、永守氏の経営哲学をまとめた『挑戦への道』の輪読をユニットごとに4、5人で行う。当時の社員のバイブルである『挑戦への道』は1冊ごとにシリアルナンバーが振られ、退職時には人事部に返さなくてはならない。そのため原本の入手はできなかったが、筆者はそのエッセンスをまとめた文書を入手した。

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