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巨大商船の心臓部はなぜ、大同特殊鋼でなければならないのか。シェア8割の裏にある素材力の一方、中国メーカーによる模倣への危機感も

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名古屋電燈灯から製鋼部門を分離し1916年に設立された電気製鋼所が、大同特殊鋼のルーツ(写真:時事)

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世界の海運を支える全長300m超の巨大なタンカーやコンテナ船。その心臓部であるエンジンには、長い航海の間、極めて高い熱と圧力がかかり続ける。特に負荷がかかるバルブ部品において、世界シェアの約8割を占める企業が日本にある。大手特殊鋼メーカーの大同特殊鋼だ。売り上げをここ7年間で4倍超に急拡大させた部品の正体とは。

ドーナツ形に丸形、棒形……大きさも用途もさまざまな「特殊鋼」。一般には自動車のギアやシャフトなどの部品を連想する向きが多いかもしれない。事実、同社の売り上げの過半は自動車向けだ。そうした中、売り上げ規模こそ限定的ながら、近年、群を抜く伸び率を見せているのが大型船向けの「ディーゼルエンジン排気バルブ」だ。

「舶用バルブの需要が特に強かった」。2025年10月30日に開かれた26年度中間決算説明会。その冒頭で清水哲也社長は、上期の営業利益が期初想定よりも上振れした背景について、そう強調していた。

十数年前まで続いた苦境

大型船エンジン向けの排気バルブは大同特殊鋼にとって、数十年にわたり生産を続ける戦略商品だ。強みである金属の耐熱加工技術を象徴する存在でもある。とはいえ、現在のような圧倒的シェアを継続して保ててきたわけではない。10年代には安価な競合材料や他社の特許戦略に押され、受注を大幅に減らした時期もあった。

苦境を脱する転機となったのが、10年代後半に強まった環境規制の動きだった。

ディーゼルエンジンで重油をたきまくり、大量のCO2を排出する海運業界にとって、排出削減は至上命題。削減にはエンジンの燃焼効率向上が不可欠だ。それを追求すればするほど、エンジン内部は従来以上に高温になり、負荷が高まることを意味する。それに耐えうるバルブを造れるかが、CO2排出削減のカギになる。

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