日本の貿易量の99.6%(2023年)は海上輸送が担う。島国日本にとって海運業は生命線であり、経済安全保障の根幹を成すインフラである。
しかし今、その足元を支える国内造船業は、かつてない危機に直面している。
国土交通省の公表資料によれば、輸送能力を示す「保有船腹量」で日本は世界第3位を維持する一方、船舶を建造する国内造船業の世界での存在感は縮小が続く。世界での受注シェアは19年の19%から24年には8%へ落ち込んだ。
国内造船所の建造能力は24年時点で年間約900万総トンにとどまり、日本船主が必要とする年間1800万総トンの半分にすぎない。この需給ギャップが常態化し、日本船主による発注の3~4割が中国など海外造船所へ流出している。造船現場の人手不足も深刻で、「日本の船を日本で造りたくても造れなくなる」という海外依存リスクが顕在化している。
こうした局面を打開しようと、日本政府は「造船業再生ロードマップ」を25年末に打ち出した。35年までに官民合わせて1兆円規模の投資(政府の設備投資補助、民間の研究開発・設備投資など)を行い、脱炭素技術をテコにしたゲームチェンジでシェア奪還を狙う。
造船弱体化は海運弱体化につながる
ここで重要な役割を担うことになるのが、日本郵船、商船三井、川崎汽船の海運大手3社だ。
各社が進める脱炭素化のための新燃料船導入や技術戦略は、海事産業全体を強化する取り組みの核の1つに位置づけられる。日本船主協会・長澤仁志会長(日本郵船会長)も「造船業が弱体化すれば、いずれ日本の海運業も弱体化する」と危機感を示す。
もっとも、海運業の脱炭素化の道のりは平坦ではない。IMO(国際海事機関)が掲げる「50年ごろまでに国際海運からのGHG(温室効果ガス)排出ゼロ」という国際目標については、条約改正案の採択が見送られるなど、不透明感が残る。主要国間の利害対立や、アメリカの政策スタンスの変化が背景にある。そもそもゼロエミッション船への転換はコストも重く、移行は容易ではない。それでも日本の海運各社は独自戦略で前進を続けようとしている。



















無料会員登録はこちら
ログインはこちら