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走れども無給、「零細運送」社長兼ドライバーの悲哀。物流の「2024年問題」後のリアル、足りぬ運賃上げ幅

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1日に500キロ超を運転しても、得られる利益はごくわずか。零細運送会社の経営は厳しい(写真:編集部撮影)
2024年4月にトラックドライバーの時間外労働が規制され、一時は崩壊を危惧された物流業界(いわゆる「2024年問題」)。各社の努力で大きな混乱は避けられているものの、人手不足などの諸問題が解決したわけではない。
現場は今、どうなっているのか。記者は11月下旬、北信越地方のある零細運送会社を訪問。トラックの助手席に乗り込み、2日間にわたり社長兼ドライバーの男性を密着取材した。そこで見えたのは、いくら走っても満足に稼げない現実だった(敬称略)。

1箱4キロの箱400個を手積みするドライバー

肌を刺すような冷気が満ちる夕暮れ時、田園に辺りを囲まれた農場の一角で、「クッ」「ウッ」とくぐもった白い吐息が、ひっそりとした静寂に吸い込まれる。その声の主――末兼憲三(仮名、63歳)は、傍らに寄せたフォークリフト上のパレット(荷物をまとめて載せる台)から、小松菜が詰め込まれた1箱4キログラムほどの段ボールを持ち上げ、自ら運転してきた4トントラックの荷台に次々と移し替えていく。

「暑いな、汗かいてきた」。末兼はそう独りごちると、1桁台の気温にもかかわらず、作業着の上っ張りを脱ぎ捨てた。いかにも肉体労働者然とした屈強な体つきは若々しいが、それとは対照的に、短く刈り上げた髪には白いものが交じる。約400箱の積み込みを終えたのは、作業開始からピッタリ70分を経た午後5時29分。荷物はパズルゲームの「テトリス」のように、規則正しく組み上げられた。

「きれいに積みましたね」と記者が労うと、末兼は「そりゃそうよ。おれの手積みは芸術だぁ」と満足そうに笑った。一杯になった荷台を閉じ、運転席へと身を躍らせた後、携帯電話で「明日の現場は……」などと部下への指示を始める。彼は単なるドライバーではなく、有限会社「末兼運輸(仮名)」の社長、経営者なのだ。保有するトラックは5台、国から運送事業の許可を得られる最低限の数だ。

従業員数は末兼を除くと4人。いずれもドライバーで最年少が55歳、上は70代で平均年齢は60歳を超える。以前はもう1人いたが、2年ほど前に急死した。求人を出してもまともな応募はなく、頭数が足りないため、現場からほぼ退いていた末兼が再びハンドルを握った。最大の荷主は地元の青果市場で、各地の農協などを回って野菜を集めるのが主な業務だ。ほかに工業系の製品や部材輸送も手がけている。

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