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葉山町からホテル開発の許可を得るためにトゥモローランドが不可解な訪問記録を提出か

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左側がYさんの実家、右側が日動画廊の所有地。奥が開業延期となっているホテル「Casa CABaN HAYAMA」。道幅を広げようとトゥモローランドが苦心したエリア(住民撮影)

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皇室「御用邸の町」として知られる神奈川県葉山町。時間がゆったりと流れる海辺の町に魅了される人は今も昔も数多く、ある不動産会社が実施した「住み続けたい街ランキング」首都圏版では5年連続でトップに立っている。
ところが今、その町が揺れている。ある住民が「葉山の豊かな日々が消し飛ばされた」と憤激するその原因は、海岸線沿いに建設された豪奢なホテルだ。住民が建設に強く反発する理由は一つや二つではなく、無数にある。怒りの矛先は事業者、設計会社のみならず葉山町、神奈川県にまで向けられている。
葉山の波は鎮まるのか。ジャーナリスト、田中周紀氏による連載企画「波乱 御用邸の町『葉山』住民の憤激」第4回は、ホテル建設を企画したアパレルメーカー、トゥモローランド(東京都渋谷区、佐々木啓之代表取締役会長。以下、啓之氏)が葉山町長名の「ただし書き」を獲得するために作成したとみられる、取り付け道路沿道住民への不可解な訪問記録について、前編をお送りする。

第1回 御用邸の町「葉山」の豪奢ホテルに住民が憤激
第2回 葉山町「いわく付きの場所」でホテル開発の手口
第3回 葉山町ホテル開発許可に向けた設計会社の口車
第4回 葉山町からホテル開発許可を得るための"秘策"(本記事)


「当初、葉山の土地の道路の曲がり角に近い一角を45㎝角ほど売ってもらえないかとの相談が(姉に)あり、断っています」

トゥモローランドが葉山町の森戸海岸沿いの一等地に計画した高級リゾートホテル「Casa CABaN HAYAMA」の建設をめぐり、現在は埼玉県に暮らす葉山町出身の女性Yさんは2023年9月29日、こんな陳述書を建設反対派住民側の代理人弁護士に提出している。

Yさんの実家は、大手画廊・日動画廊(東京都中央区)が葉山町堀内字葉山に所有する邸宅の、狭い町道を挟んだ向かい側に所在しており、ブロック塀が立っている。この塀に沿って左方向に曲がり始める町道は、向かいの日動画廊所有地の入り口前からクランク状になる。日動画廊所有地の左側に立つ石積みの塀の門柱角と、Yさんの実家のブロック塀の角とを直線で結んだ距離は実測値で3.79m。都市計画法に基づく道路幅の規定の4mを下回るため、ここに敷地面積1000㎡以上の建物を建てようとしても、神奈川県の開発許可を得ることは難しい。

双方に接触したトゥモローランド

もともと森戸海岸沿いの約997㎡の土地でビーチラウンジ(カフェ)「CABaN TOMORROWLAND」を営んでいたトゥモローランド。遅くとも18年前半までにはここにホテルを建てると判断して、業界第5位の久米設計(東京都江東区)にその設計を依頼した。両者が同年11月にホテル敷地と周辺の町道の計測結果を検討した際も、課題とされたのは前述した箇所の拡幅だったようだ。近隣住民が話す。

「あそこを幅4m以上に拡幅しようと思えば、Yさんの実家の所有者である母親のUさんと日動画廊の双方、またはその一方と交渉して、塀が立つ場所を一部買い取った後、塀を壊してセットバック(後退)させるのが一般的なやり方。トゥモローランドは当初、日動画廊とUさんの双方と接触していたようです」

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