葉山町「いわく付きの場所」でホテル開発を可能にした手口。法律には明記されていない「道の幅」の計測方法を独自解釈してみせた設計会社
前景に江の島、背景に富士山がそびえ立つ葉山町の絶景スポット、森戸海岸(葉山町堀内)。アパレルメーカー、トゥモローランド(東京都渋谷区)の佐々木啓之代表取締役会長(78。以下、啓之氏)は2017年7月15日、同伴した知人の建築家兼インテリアデザイナー、パトリシア・ウルキオラ氏がその雄大な景観に魅了される姿に触発された。「この場所にホテルを造ろう」。啓之氏はそう決めた。
前回述べたとおり、トゥモローランドは持ち株会社ティ・エム・エル名義で07年8月、森戸海岸に面した堀内字葉山に計4筆、約997㎡の土地を購入。その2年4カ月後の09年12月には関連会社アシタバの名義で、この北側に隣接する計2筆、約1・9㎡の小規模な土地を購入し(このときは前述の土地もアシタバが購入して名義変更)、13年4月からはここでビーチラウンジ(カフェ)「CABaN TOMORROWLAND」の営業を開始していた。
いわく付きの場所だった
それから3年7カ月が経った16年11月、トゥモローランドは前述した約997㎡の土地の南側に隣接する約941平方メートルの土地をティ・エム・エルの名義で購入する。実はここ、東京のゲームソフト開発会社が14年9月に購入してホテル建設をもくろんだものの、近隣住民の強硬な反対を受けて断念。北隣でカフェを営業していたトゥモローランドがこれを買い受けるといういわく付きの場所だった。
ともあれこの時点で、トゥモローランドがグループ会社名義で取得した森戸海岸沿いの土地は計約1940㎡に上り、すでに最終的なホテル敷地面積と同等の広さになった。実は啓之氏は当初、ここに同社の保養所を建てる考えだったという。
だが、眼前に広がる海に沈む夕日と、浮かび上がる富士山に感動するウルキオラ氏に触発された啓之氏は、盛況だったカフェを閉じて本格的なリゾートホテルを建てると決断。ウルキオラ氏とその構想を練るとともに、遅くとも18年前半には設計業界5位の久米設計(東京都江東区)に現地の道路の幅などに関する調査を依頼して、同年10月末にはカフェを閉店した。




















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