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検証〈水クライシス〉最終回 利水・治水の枠を超えたダム最前線。「ハイブリッドダム」「田んぼダム」に見る、新たな可能性

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「ハイブリッドダム」に選定された湯西川ダム(写真:7maru/PIXTA)
「気候二極化」の時代を迎える中、流域の安全と暮らしに最も影響を与えるのがダムである。これまでダムは、洪水を防ぐための「治水ダム」、水道や農業用水をためる「利水ダム」、治水や利水などの「多目的ダム」、電力を生む「発電ダム」などと目的別に整備され運用されてきた。
しかし、近年はその目的の垣根を越え、治水と発電を両立させる運用を行うなどのイノベーションが広がっている。最終回となる第4回では、「ハイブリッドダム」を取り上げる。
連載<水クライシス>
第1回:「洪水or渇水」気候二極化が老いたインフラを襲う
第2回:「治水も利水も」利害対立から両立への政策大転換
第3回:〈水危機〉人手・財源不足が生み出す新ビジネス
第4回:「ハイブリッドダム」「田んぼダム」の可能性とは

国土交通省は、2022年度に直轄6ダムを対象に、23年度には国交省および独立行政法人水資源機構が管理する計72ダムを対象に、既存のダムに発電設備を新増設して治水と発電を両立させる「ハイブリッドダム」の試行を始めた。そして24年6月、国土交通省は「ハイブリッドダム」の公募手引きを公表。公募に向けたケーススタディの対象として、湯西川ダム(栃木)、尾原ダム(島根)、野村ダム(愛媛)の3ダムが選ばれ、年間で合計約2000万キロワット時(一般家庭約5000世帯相当)の発電量の増加を想定するなど、実装フェーズに入った。

そして25年10月、東京電力リニューアブルパワーを代表企業とする5社のコンソーシアムが、湯西川ダム新水力発電所設置・運営事業(ハイブリッドダム事業)の事業候補者として選ばれた。国交省管轄のダムとして全国初のハイブリッドダムの取り組みとなる。今後、湯西川ダムが持つ未利用水のエネルギー活用の促進が期待される。治水に寄与しつつ、再生可能エネルギー電源を増やす。ダムという、ある種保守的な運用が求められるインフラにおいて、革新的なことだ。

ハイブリッドダム化で「稼ぐダム」へ

ハイブリッドダムの特徴は、既存の治水ダムや多目的ダムに、水力発電という収益源を後付けすることにある。ダムの水位を通常よりやや高めに維持したり、降雨後に放流するタイミングを工夫したりすることで、発電量を増やすことができる。新たに発電設備を整備することも予定されているが、前出の国交省直轄の6つのダムでは運用改善だけでも、年215万キロワット時(一般家庭約500世帯相当)の発電量の増強効果が確認されている。

さらに、国交省および水資源機構が管理する治水ダムなどでは、発電設備のないダムに発電設備を順次導入し、新たに電力を生み出す計画が示されている。ハイブリッドダム化は、ダムを維持管理費がかかるばかりの「コストセンター」から「稼ぐインフラ」へと変える取り組みだ。

潜在市場が大きいことも間違いない。国交省や水資源機構、道府県が管理するダムだけでも全国で573基ある。現時点でハイブリッドダムの試行対象は国交省の直轄ダムが中心だが、今後、自治体が管理するダムにも対象が広がれば、発電設備のないダムや管理用発電のみのダムが順次「ハイブリッド化」の候補になってくる。

ダムが「稼ぐ」ようになったら、そのお金はどこに向かわせるべきか。筆者は、まずダムそのものの維持管理、とりわけ堆砂や流木対策などに回すことが重要だと考えている。

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