有料会員限定

トヨタ工場も止めた<水クライシス>、洪水or渇水の「気候二極化」が老いたインフラを痛めつける…もう「流域バラバラ運用」では立ちゆかない

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

有料会員限定記事の印刷ページの表示は、有料会員登録が必要です。

はこちら

はこちら

縮小

特集「水クライシス」の他の記事を読む

今年は梅雨の少雨に加えて夏も降雨量が少なく、各地で渇水が発生する異常事態となった。加えて、毎年のように発生している局地的な豪雨も全国各地で発生し、特に九州では8月中旬に発生した線状降水帯により甚大な被害が生じた。
このように、長く雨が降らないことによる渇水と、局地的な豪雨による洪水被害という極端な雨の降り方が災害をもたらす「気候二極化時代」が到来している。
河川やダム、ため池、上下水道といった水にまつわる既存のインフラは、高度経済成長期に集中的に整備され、性能低下や故障のリスクが高まっている。加えて、建設時点の気候条件や過去の観測記録に基づいて設計されており、想定外の運用を余儀なくされれば、インフラの耐久性や効率性に影響が及ぶ。
筆者は、2017年に発生した九州北部豪雨で親族が住む地域が甚大な被害を受けたことをきっかけに問題認識を新たにし、水インフラにまつわるプロジェクトに携わってきた。本特集「水クライシス」では、インフラ老朽化と気候の二極化という迫り来る事態を前に、個々のインフラ単位ではなく、流域全体で対応する必要性を指摘。先進的な取り組みや、それを支える技術などを紹介する。

トヨタ工場を止めた矢作川・明治用水の漏水

水インフラの老朽化が産業に大きな影響を引き起こした象徴的な事例がある。

2022年5月、愛知県を流れる矢作川から取水する明治用水で大規模な漏水が発生した。工業用水の供給に直結するこの事故は、トヨタ自動車の本社工場の一部停止やグループ企業である豊田自動織機長草工場の稼働停止へと波及した。

矢作川から取水した水は、製造工程において洗浄や冷却など多用途に使われ、水の供給が停止することは大規模な生産の調整や停止に直結する。電力への影響も懸念され、一部火力発電の出力抑制も実施された。

次ページインフラが今後20年で一気に老いる
関連記事
トピックボードAD