〈相次ぐ再編劇〉SCSK、NTTデータ、富士通、NEC…合従連衡が進む"SIer業界"はどこに向かうのか。生成AIの波で業界構図は一変する可能性も
旺盛なDXや基幹系システム刷新の需要に沸く、SIer(システムインテグレーター)業界。AI時代に業界構図はどう変わるのか。
総合商社の住友商事は10月29日、50%超を出資するSIer大手のSCSKをTOB(株式公開買い付け)を通じて完全子会社化すると発表した。TOBが成立すればSCSKは上場廃止になり、買収総額は約8800億円に上る。
「将来的に完全子会社化は予想していたが、想定よりも動きが速い」。ある競合SIerの社員は、そう驚きを口にする。
というのもSCSKは昨年12月、ネットワーク基盤統合に強い独立系SIerのネットワンシステムズを買収したばかり。総額約3600億円に上る巨額投資で「アプリからインフラ、ネットワークの領域までを含め、お客様のラストワンマイルを面でサポートする」(SCSKの當麻隆昭社長)狙いがあり、2027年4月に両社は経営統合される見通しだった。
開示資料によると、住友商事は今年1月時点で、ネットワン買収直後のSCSKに完全子会社化の検討を打診。ネットワン統合に向けた準備が進む裏側で、さらなる大型再編に向けた交渉が行われていたわけだ。
住商社長「速やかな意思決定が必須」
SCSKは住友商事グループにおけるデジタルソリューション領域の中核企業。1969年に住友商事子会社として設立された住商情報システム(SCS)が、独立系SIerのCSKを吸収合併し、2011年に誕生した。
幅広い産業にITサービスを提供し、自社開発のERP(統合基幹業務システム)やデータセンターも展開する。足元では自動車業界向け車載ソフト開発などに注力。合併以来13期連続で増収増益を達成し、ネットワンの買収を経て、26年3月期は売上高7900億円、営業利益850億円を見込む。30年度には売上高1兆円を視野に入れる。
なぜ、この時期にグループ再編を決めたのか。住友商事の上野真吾社長は10月29日に開いた記者会見で、「想定をはるかに上回るスピードで生成AIが急速に進展、世の中がデジタル化していく時代なので、この急速な進展に乗ってSCSKに飛躍的な成長を遂げてほしい。そのために株主としてのフルサポート、SCSKの速やかな意思決定が欠かせない」と説明。商社の顧客網や経営資源を活用することで、「グローバルで業界を代表するプレイヤーに進化してほしい」と期待を寄せた。




















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