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グーグルGeminiの「ウソ」でキャンセル続出の顛末。アメリカで進むAI名誉毀損訴訟、一筋縄ではいかない現実

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(写真:Tim Gruber/The New York Times)

ミネソタ州の太陽光発電業者ウルフ・リバー・エレクトリックの営業担当者が、契約のキャンセルが異常に増加していることに気づいたのは昨年のこと。元顧客に理由を尋ねると仰天の答えが返ってきた。

グーグル検索で、同社が詐欺的な販売行為をめぐる訴訟で州司法長官と和解したという情報を見つけたため、契約を取りやめたというのだ。だが、同社は州政府に訴えられたこともなければ、そのような主張をめぐる訴訟で和解した事実もない。

修正ツールを使っても解決できず…

ウルフ・リバー・エレクトリックの幹部が自ら確認した瞬間、当初の困惑は不安へと変わった。グーグルのAI技術「Gemini(ジェミニ)」が検索結果の最上部に表示した情報に、そうしたウソが含まれていたからだ。さらに、検索ボックスに「ウルフ・リバー・エレクトリック」と入力するだけで、訴訟和解に関するワードが検索候補として自動的に表示された。

キャンセルが積み重なる中、グーグルが提供する修正ツールを使っても問題の解決にはつながらず、ウルフ・リバー・エレクトリックの幹部は、巨大テック企業グーグルを名誉毀損で訴えるしかない、という決断に至った。

「よい評判を築くために、多くの時間と労力を費やしてきた」と、2014年に親友3人とウルフ・リバー・エレクトリックを設立し、同社をミネソタ州最大の太陽光発電業者へと成長させたジャスティン・ニールセンは語った。

AIツールが作り出したコンテンツをめぐる名誉毀損訴訟は、アメリカでは過去2年で少なくとも6件あり、ウルフ・リバー・エレクトリックの訴訟はその1つだ。最先端のAI技術は個人や組織について損害をもたらす虚偽情報を生成して公表しただけでなく、多くの場合、そのAIモデルを開発し、そこから利益を得ている企業が問題に気づいた後も虚偽情報の発信は続いたと、同社は主張している。

これらの訴訟が通常の名誉毀損訴訟と異なるのは、人間ではないAIが作成したコンテンツによる名誉毀損を立証しようとしている点だ。これは新しい概念であり、一部の法専門家の関心を引きつけている。

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