食器のノリタケが120年の伝統から大転換する理由、東山社長が明かす「チャレンジしなかった反省」と組織風土改革。電子部品材料などで成長目指す
保守が「こだわり」になってしまった
――経営環境の変化を受ける中、「保守に死す」(現状維持は減退につながる)という創業者・森村市左衛門の言葉を社員に向けています。その理由は?
ノリタケには120年もの歴史があって、創業者の言葉は皆が知っているはず。ただ、その言葉の解釈が違ってきている気がする。保守が「こだわり」になってしまった。
例えば、ノリタケの食器といえば白磁で花柄のきれいでフォーマルなもの。それを100年以上やってきた。ところが、今から30~40年前に電子レンジや食器洗い機が家庭に普及した際、当時はその対応をしなかった。
ノリタケの食器には金の縁取りがある。だから電子レンジや食洗機に入れるのは「ダメになるに決まっているじゃないか」と。本来はそこでチャレンジすべきなのに言い訳していた。今ごろになって、電子レンジや食洗機でも使える金属の開発をやっている。
今は時代も変わってしまっていて、フォーマルな花柄は世界的にもはやっていない。ノリタケでは最近になって、白磁だけではなくグラデーションで色のついた窯変(ようへん)の食器も出すようになった。
――いつの間にか守りに入ってしまっていた、ということでしょうか。
長年の変化に皆気づいていない、というか聞きたくなかったのだろう。自分たちの事業を守ろうとして、無視したり排除したりしてしまった。時代の変化をあえて見てこなかった。
(売上高の4割を占める)工業機材の事業も同じだ。80年以上の長い年月をかけて、ノリタケは自動車や鉄鋼、ベアリング向けの研削砥石を手がけており、今では業界トップ。シェアさえ伸ばせば事業は右肩上がりだった。
だが、現在は日本の鉄鋼業が中国企業の攻勢を受け、自動車産業だってハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)に変わってきている。時代の流れに遅れ、利益が出ないからと設備投資も先送りにしてしまっていた。
――設備を維持しようにも、投資コストがかさみます。
それだけでなく、環境規制などの要求も高まる中で、未来への投資も不可欠だ。過去の清算と成長投資の両方を同時にやらないといけない。
今まではどこかで甘えていた。が、過去のことを言ってもしょうがない。先人がせっかく「保守に死す」という言葉を残してくれているわけだから、われわれはもう一度原点に立ち返って、何をするか考えないといけない。




















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