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大塚HD社長が激白、主力薬の「特許切れ」を乗り切る盤石策。主力の抗精神病薬は認知症向けに注力、既存製品の拡大と新薬の開発を両輪で進める

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井上眞/いのうえ・まこと 1958年生まれ。長崎県立国際経済大学(現長崎県立大学)卒業後、83年に大塚製薬入社。診断、医薬品、一般消費者向け事業などを歴任後、20年に代表取締役社長(現任)。24年にホールディングスの代表取締役COO、25年1月より代表取締役社長(現任)(撮影:尾形文繁)
国内製薬大手、大塚製薬を傘下に持つ大塚ホールディングス(HD)が、重大局面を迎えている。抗精神病薬「エビリファイメンテナ」、腎疾患治療薬「ジンアーク」と屋台骨となる医薬品の特許が相次いで切れ、後発薬の参入が可能になった。同社はこの「特許の崖」により業績低迷を経験した過去がある。同じ轍を踏まず、安定成長につなげることはできるのか。井上眞社長に聞いた。


――抗精神病薬「レキサルティ」が好調です。統合失調症やうつ病に加え、海外ではアジテーションと呼ばれる認知症による過活動や攻撃的言動などに対する処方も広がってきました。

「レキサルティ」は、脳内の3つの神経伝達物質のバランスを整える作用が優れている。とくに既存の抗うつ薬で治療しても完全には治らない大うつ病性障害に対して想定以上の改善効果が示された。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)に対する効能追加がアメリカで承認されなかったのは残念だが、今後はアルツハイマー型認知症による行動・心理症状(BPSD)向けに注力していく。アメリカに続き、日本でも2024年9月に追加効能が承認された。国内での処方は大幅に増え、9月末で14万人に達している

認知症になると、認知機能の低下に伴い思うように表現ができないことにイライラしたり、攻撃的になったりする。これに対応したり、耐えたりするご家族や介護スタッフ、医療機関などの負担は非常に重い。「レキサルティ」は、こうした症状の発生頻度を抑えることができる。医薬品の治療は、患者さん本人の症状改善を目的とするのが一般的だが、本件では周囲への効果・影響にも着目している。

すでに医療機関からは(投与によって)入院していた認知症の人が帰宅できた、といった高い評価をもらっている。

28年度売上収益2兆5000億円を目指す

――24年10月に「エビリファイメンテナ」、今年4月に「ジンアーク」と、主力製品の特許切れが相次いでいます。15年に「エビリファイ」の特許が切れた後のような業績悪化を回避する見通しは立っていますか。

当社を支えてきた2製品が特許切れを迎える中で、重要なのは既存製品の拡大と新薬の開発を両輪で進めることだ。

そこで、COO(最高執行責任者)時代に作った24~28年の中期経営計画で設定したのが「グローバル10」という枠組みだ。次世代の成長ドライバーとして期待できる10製品のことで、28年までの成長を牽引する2製品「コア2」と、さらにその次の29年以降に成長が期待される8製品「ネクスト8」で構成される。

今中計期間中はコア2にあたる、大塚製薬の「レキサルティ」と子会社の大鵬薬品工業による抗がん剤「ロンサーフ」に加え、「ネクスト8」を中心とした製品の貢献もある。これで特許切れによる売り上げ減少分はおおむねカバーできる見通しだ。

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