オランダに本社を置く中国資本の半導体メーカー「ネクスペリア」。その経営権をめぐるオランダと中国の対立が、世界の自動車産業のサプライチェーンを混乱に陥れている。
10月20日午前、広東省東莞市にある安世半導体中国(ネクスペリア中国)の工場の正門を財新記者が訪れると、そこには中国各地から集まってきた多数の取引先関係者が陣取っていた。彼らはスマートフォンを掲げて出入りする車両や従業員を撮影し、それらの動きから工場内の生産状況を推し量ろうとしていた。
「ネクスペリア中国(の担当者)とやりとりしても、『工場は正常に稼働している』と繰り返すだけで有益な情報が得られない。われわれは(ネクスペリア製品の)供給停止を心配しており、実地調査のためにここに来た」
正門前で連日待機しているという取引先関係者は、財新記者の取材に対してそう打ち明けた。
売上高の6割が自動車向け
一体何が起きているのか。事件の発端は9月30日、オランダ政府が中国の電子機器大手の聞泰科技(ウイングテック)から、同社の100%子会社であるネクスペリアの経営権を強制的に接収したことだ。
ネクスペリアはもともと、オランダのフィリップスの半導体事業が分離独立したNXPセミコンダクターズの汎用電子部品部門だった。ウイングテックは2018年から20年にかけて総額338億元(約7255億円)を投じ、ネクスペリアを完全子会社化。ウイングテック創業者の張学政氏は19年12月にネクスペリア会長に就任し、20年3月からはCEO(最高経営責任者)を務めていた。
中国の華泰証券のレポートによれば、ネクスペリアはパワー半導体の世界市場で約2.6%のシェアを持ち、メーカー別のランキングは第10位と、決して目立つ存在ではない。
だが、同社の顧客リストにはドイツのフォルクスワーゲン(VW)やBMW、日本のホンダなど多数の自動車大手が名を連ねる。ウイングテックの決算報告書によれば、ネクスペリアを中核とする同社の半導体事業は25年上半期(1~6月)に78億2500元(約1680億円)を売り上げ、その6割近くを自動車向けが占めていた。



















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