「事業環境は厳しさを増している」。日本製鉄の森高弘・副会長兼副社長は、2025年11月の決算会見の冒頭でこう口にした。決算説明資料の書き出しは「世界の鉄鋼事業環境は未曾有の危機的な状況」だった。
こうした認識は鉄鋼各社におおむね共通している。日鉄、JFEホールディングス(HD)、神戸製鋼所の高炉3社は、26年3月期の業績が、在庫評価差などを除いた実力ベースの事業利益や経常利益で対前期比減益になると見通している。
中国の過剰生産、大量輸出
苦しさの最大の要因は、中国国内で生産される安値鋼材の流入にある。中国勢は、国内の不動産不況や成長鈍化をよそに、生産量を減らしていない。JFEHDの寺畑雅史副社長は「中国の過剰生産、大量輸出によるバランスの崩れ、市況の低迷が世界各国地域に波及している」との認識を示す。
加えて日本の内需も厳しい。特に建設向けの鉄鋼需要は、人手不足による工期遅れなどが相次いでいる影響で低迷が続く。
25年は各社、高炉休止によるコスト削減や、高付加価値品の割合を増やす製品構成改善により「何とか耐えてきた」(鉄鋼大手幹部)。26年もこうした厳しい業況は「続く」(同幹部)との見方が多く、各社は一層の製品構成改善を進める。例えば、JFEHDは高付加価値の洋上風力発電向けや、車の電動化に欠かせない高級材の比率向上を目指す。



















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