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USスチール競争力向上に寄与しなかった保護政策 安全保障を盾に企業の自力再生の芽を奪うのか

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USスチールの主力拠点、ゲイリー製鉄所内部の様子。1908年から続く歴史ある拠点だ(写真:USスチール)

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アメリカ・バイデン前大統領によって禁止命令が出された日本製鉄によるUSスチール買収計画は、2月7日に行われたトランプ大統領と石破首相による日米首脳会談をへて、「買収ではなく多額の投資」という方向性へ向かい始めた。
日鉄によるUSスチールの買収を禁止した理由について、バイデン前大統領は「国内で保有され運営される強い鉄鋼産業は、国家安全保障上の最優先事項で、強靱なサプライチェーンの要」「アメリカ最大の鉄鋼メーカーのうちの1社を外国の支配下に置くことになり、国家安全保障とサプライチェーンにリスクをもたらす」と説明している。
中国の脅威に対抗するためとする国家安全保障政策は近年アメリカの最重要テーマの一つだが、果たして政府の保護は企業や産業の強化につながるのか。
デジタル特集「日鉄の試練」3回目は、USスチールが身売りを検討するほどにまで凋落する現在までに採られた、アメリカの鉄鋼保護政策の実態に迫る。
【「日鉄の試練」ラインナップ】
2月14日(金)日鉄とUSスチールに迫りくる「3つのシナリオ」
2月19日(水)USスチール「買収阻止」に追い込んだ労組の正体
2月21日(金) 経済合理性だけでは片づかない日米関係の現実
Coming Soon! USスチールへの「投資」と日本製鉄の事業戦略

バイデン大統領(当時)によって禁止が命じられた日本製鉄によるUSスチール買収計画。日鉄とUSスチールは禁止判断の裏で不当な政治介入が行われたとしてアメリカ政府などを相手取る訴訟を提起した。買収禁止命令の取り消しと、買収に必要な審査の再実施を要求している。

他方、トランプ大統領と日鉄幹部の会談も近日中に予定されており、買収計画と裁判の行方はどちらも見通せない状況だ。

かつて世界最大の鉄鋼メーカーだったUSスチールは、アメリカ発展史を象徴する名門企業だ。しかし現在の売上高はアメリカ国内の鉄鋼メーカーで3番手。長期低迷に陥り、主要な生産拠点の閉鎖を検討せざるをえない状況に追い込まれている。

関税でUSスチールは強くなるのか

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