
共愛学園前橋国際大学は学長のリーダーシップの下、大学全体で議論し大胆な科目再編を行った(写真:月の砂漠 /PIXTA)
大学が直面する危機の構造と改革の方向性について多面的に取り上げる本連載。前回は私立大学の経営再建策について紹介した。今回は大学の学部再編や生成AI活用の影響など、教育再編の動向について解説する。
10年後の2035年には大学進学者が急減期に入る。今後、私立大学は生き残りをかけて再編・縮小が本格してくると予想される。将来の私立大学の教育面での再編を考えたとき、その改革手段は3つある。今回は、その手段をそれぞれ紹介していきたい。
学部再編は「先につくる」が定石
(1)学部の再編
第1は学部の再編だ。「再編」というと、スクラップ・アンド・ビルドをイメージしがちだが、学部再編の場合は順序が逆で、壊すのではなく「先につくる」のが戦略の定石だ。
学生や教員、予算の受け皿となる新学部を先に構想し、4~5年もしくはさらに長い年月をかけて人や金を少しずつ移しながら旧学部を静かに退場させていく。この看板掛け替え型の再編は、制度上のハードルや学内の反発をやわらげる現実的な手段として採用されている。
2015〜2024年に文部科学省に認可された新設学部は150件超にのぼるが、そのうちおよそ3割はこの種の再編とみなせる。一方で、同期間に他学部への統合や再編を伴わず、純粋に廃止となった学部は20に満たない。真正面から既存学部を廃止するのは困難であることがうかがえる。
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