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東京大学の藤井輝夫総長が語る、財務・経営戦略と授業料値上げ「大学の社会貢献のため、裁量がきく資金を確保することが重要」

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「基金の運用を通じて裁量がきく資金を長期的、継続的に確保するエンダウメント型経営を目指す」と語る東京大学・藤井輝夫総長 (撮影:尾形文繁)

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この記事は、「東京大学・藤井輝夫総長が語る学費値上げの真意」の拡大版です。
東京大学は2025年度の学部入学者から授業料を年53万5800円から年64万2960円へ約11万円引き上げる。2024年5月に授業料の値上げを検討していることが報じられると、多くの学生や教員から反対の声が上がった。しかし9月に値上げを正式に決定した。
東京大学の藤井輝夫総長は「教育環境の拡充など課題は待ったなし。このタイミングで授業料値上げに踏み切らないといけないという思いがあった」と語る。
2004年の国立大学法人化以降、国からの補助金である運営費交付金は減少傾向にある。東大は授業料の値上げだけでなく、基金(エンダウメント)の拡充など財源の多様化を進めており、補助金に頼らない経営を目指してきた。「自律的な経営」への転換をどう進めるのか、藤井総長に聞いた。

このタイミングでやらなければならない

――2025年度から学部生の授業料を引き上げます。

東大はこの20年間、授業料の改定ができていなかった。値上げのタイミングがずっと延びてしまっており、このタイミングでやらなければならないという思いがあった。

総長に就任した2021年に中長期の財務を検討する財務経営本部を設置し、授業料の値上げも一つの可能性として考えてきた。ただ、国立大学の授業料の上限は(国が定める授業料標準額の120%にあたる)64万2960円と決められていて、財務の強化に大きなインパクトがあるものではない。それ以上に学生の学ぶ環境を改善するために授業料の値上げを決めた。

授業料の引き上げにより、2028年度末に13.5億円の増収を見込んでいる。増収分は学修支援システムなどの機能強化やティーチングアシスタントの待遇改善など教育環境の改善に充てる。

授業料の引き上げと同時に、授業料免除の対象も広げた。全額免除の対象は世帯年収400万円以下から世帯年収600万円以下に拡大するなど学生への経済的支援を強化している。「経済的には貧しくとも、優秀であれば東京大学で学べる」という伝統を引き続き重視する。

――2024年5月に授業料の値上げが検討されていると報じられ、多くの学生から反対の声が上がりました。

もともと2024年6月に授業料の改訂や免除の素案をまとめ、学生などへ説明する予定だった。が、5月に報道が先走ってしまったこともあり、学内でさまざまな意見が出て、当初のスケジュールが崩れてしまった。

われわれのやり方が上手でなかった部分もある。ただ、9月の授業料の値上げの決定に至るまで、オンラインで学生との対話の場を設け、アンケートもとるなど時間をかけて検討してきた。

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