
前回は、再生医療界のトップランナーの1人、澤芳樹・大阪大学大学院特任教授が、iPS細胞(人工多能性幹細胞)由来心筋シートの培養上清(ばいようじょうせい)を点滴する富裕層向けの自由診療クリニックに参画した問題を取り上げた。
培養上清とは幹細胞を培養した後の培養液の上澄みのことで、成長因子などのさまざまなタンパク質やエクソソームなどが含まれる。
細胞や動物を使った実験で、培養上清やエクソソームには炎症の抑制や血管新生などの効能があることが示唆されているものの、人への投与に関しては安全性や有効性が確立されていない。
澤氏はクリニックとの関係を解消したと述べており、澤氏が創業したバイオベンチャーのクオリプスも培養上清ビジネスの中断を発表した。
iPS細胞関連ベンチャーの草分けも参入
だが、「培養上清/エクソソーム」の製造・販売事業に乗り出した企業はクオリプスだけではない。
例えば、iPS細胞関連バイオビジネスの草分け的存在として知られるリプロセルは2024年7月、iPS細胞由来エクソソームの医療機関への販売を開始すると発表した。同社は2003年に京都大学・東京大学発のバイオベンチャーとして設立され、iPS細胞の事業化を進めている。販売代理店は同社と以前から業務提携を結ぶ大手旅行会社のJTBだ。
リプロセルのホームページ(HP)では「iPSエクソソーム」の特徴として、「老化した線維芽細胞(皮膚の細胞)の老化マーカーを減少させる」「線維芽細胞のコラーゲン産生量を維持する」などを挙げている。しかし根拠として示されている3本の論文はいずれも培養細胞を使った実験の成果で、動物や人に投与した結果ではない。
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