すばる望遠鏡の最強観測装置がついに本格稼働。15年の国際プロジェクトを成功に導いた研究者たちの熱意と粘り強い対話、そしていくつもの奇跡

第1回となる今回は、国立天文台の「すばる望遠鏡」で3月に本格稼働を開始した新たな観測装置について取り上げたい。

昆虫の「複眼」にたとえられるその装置は、15年に及ぶ長期の国際プロジェクトによって完成した。宇宙の暗黒物質の分布や性質、暗黒エネルギーが時間変化するのかどうかなど、重要なテーマでの研究成果が期待される。
プロジェクトが歩んできた道のりには、資金切れによる中断の危機や新型コロナウイルスのパンデミックなど数々の困難が立ちはだかった。ゴールにたどり着いた背景には、研究者たちの熱意と粘り強い対話、そしていくつもの奇跡があった。
複眼で「宇宙の国勢調査」が可能に
「15年かけてやっと装置の完成まできた。ちょっとこないだ涙が出てきたんですけれども、本当にすごいことだと思っています」
装置の本格稼働を前に行われた2025年1月の会見。プロジェクトチームを率いた東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構(IPMU)の村山斉(ひとし)教授の言葉には感慨がこもっていた。
ハワイ・マウナケア山頂に立つすばる望遠鏡は、運用開始からおよそ四半世紀が経つ。これまで随時、観測装置を増やし、性能をアップデートしながら宇宙を観測してきた。
例えば2013年から稼働する「超広視野主焦点カメラ」は、高さ3メートル、重さ3トンの巨大なデジタルカメラで、空の広い範囲を一度に、かつ高解像度で撮影できる。
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