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官邸幹部「核兵器保有論」韓国のケースからみる現実性のなさ、日本がすべきは「非核三原則」の維持と世界的な核不拡散・核兵器禁止の推進だ

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1990年代後半から北朝鮮の核開発が国際問題として浮上してからは、日本の核武装論がたびたび提起されてきた(写真:GettyImages)

2025年12月18日、首相官邸幹部が「日本は核兵器を保有すべきだ」と発言したとの報道が波紋を広げている。オフレコ会見、かつ個人的見解との断りがあったとはいうが、高市早苗首相に安保問題に関して直接提言できる幹部の発言とあって、日本国内で「核兵器保有」の是非を議論すべきとの声や、周辺諸国からは反発の声も上がった。

日本は核兵器で武装できるのかという問題は、何も新しい話ではない。原子力発電所から出る使用済み核燃料からプルトニウムを抽出して原料をつくり、日本が保有する核技術をもってすれば製造できるという声は以前から散見されてきた。1990年代後半から北朝鮮の核開発が国際問題として浮上してからは、間欠泉のように日本の核武装論が提起されてきた経緯もある。

韓国で広がる「核保有論」

しかし、世界で唯一の戦争被爆国であり「非核三原則」(核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず)を国家の基本的な方針としてきた日本では、「ノーモア・ヒロシマ」「ノーモア・ナガサキ」という意識はまだ根強く、周辺国が思っているほど議論は盛り上がらない。2011年の東京電力福島第一原子力発電所の事故もまだ記憶に新しく、いったん放射性物質が大気中に広がればどのような惨事を招くのか骨身に染みて理解している。

日本にはロシア、中国、北朝鮮とすでに核兵器を保有する国が並列する。日本と韓国はアメリカの「核の傘」にある。これはアメリカの同盟国が核攻撃を受けた場合、その防衛策としてアメリカの核兵器を用いるというものだ。

米ソ対立の冷戦時代から続いているが、韓国ではこの数年、「独自に核武装をすべき」という動きがじわじわと広がりつつある。これは北朝鮮の急速な核開発の進展が第1の理由だ。核には核で対抗して抑止力を持とうという動きだ。「韓国は独自の核武装をすべきか」といった世論調査では、半数以上の回答者、調査によっては7割超が「賛成」との結果がある。

韓国は朴正熙(パク・チョンヒ)大統領の時代に極秘に核兵器の開発を進めたことがある。また、在韓米軍が核兵器を保有していた時代があり、これをアメリカのカーター大統領が撤収させたという歴史的経緯もある。

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