北朝鮮が韓国の「戒厳令・弾劾」にとても冷静な理由 専門家に聞く・金正恩政権の政策変化が影響か
戒厳令布告から1週間の沈黙
――12月11日付『労働新聞』は「傀儡(かいらい)韓国で非常戒厳事態、社会的動乱が拡大、全域で100万人以上の群衆が尹錫悦弾劾を要求する抗議行動を展開」との見出しで初めて報道されました。戒厳令布告から1週間後の報道というタイミング、あるいは1週間は無反応だった北朝鮮の態度をどうみますか。
今回、12月11日付の最初の報道をみると「外国で起きた非常事態についての説明報道」というトーンだ。これまでの北朝鮮は、韓国の政治問題にあたかも介入することは当たり前といった声明を出し、宣伝扇動も行うという「統一戦線」戦術を使ってきた。ところが、今回は「敵対的な外国の国内情勢について知らせる」といった内容といえる。
報道までに時間がかかったのは、韓国での戒厳令の布告と、国会によるその解除決議という事態の発生に対する分析に時間がかかったとみられる。韓国で戒厳令はこの44年間なかった。そして国会による解除決議は初めてのことだ。その後の事態の動き、例えば第2の戒厳令が布告される可能性をも見極めていたのだろう。
戒厳令というのはたいへん深刻な事態だ。韓国の軍部の動き、北朝鮮に対する態度などに北朝鮮がどう対応するか、その用意をするために情報の収集に時間がかかったと思う。
――見出しにある「傀儡韓国」という言い方は北朝鮮らしい表現ですね。
『労働新聞』が韓国に対して報道する際には「情勢解説」「情勢論説」「論評」、そして「説明」といった報道を行う。前の3つはそれぞれの名称で記事が掲載されており、『労働新聞』すなわち北朝鮮当局の認識や分析、主張を提示する。しかし、最後の「説明」は、状況の紹介で終わる。
「傀儡韓国」という表現は、2024年2月に初めて登場した。それ以前で、これに近い表現は「傀儡大韓民国」で、この名称は2024年1月15日から2月17日まで6回使われた。2024年2月以降現在まで「傀儡韓国」という表現が、北朝鮮が韓国を呼ぶ際の表現として定着している。
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