北朝鮮が韓国の「戒厳令・弾劾」にとても冷静な理由 専門家に聞く・金正恩政権の政策変化が影響か

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とはいえ、今回の戒厳令は深刻な国政混乱であり、北朝鮮から何らかの内政介入的な発言があっても不思議ではなかった。論評で報道してもよい事態だった。その意味で、北朝鮮の報道が変わったという印象を強く感じている。

やはり、2021年1月の党規約改正、2024年1月の「統一」「民族」概念の破棄や「2国論」の全面展開化など対南政策の変化の表れだ。統一戦線戦術による内政介入的な指導や、韓国の混乱を煽るような対南政策ではなく、北朝鮮の国家防衛や戦争への備え、国民の思想統制をより強く重視した対応だと考えられる。

戦争への準備はするが自ら仕掛けない

――それは、北朝鮮がやはり韓国との戦争といった事態を念頭に置いているということを意味しますか。

Lee, Chanwoo/国立ソウル大学卒業。環日本海経済研究所(現・新潟県立大学環日本海経済研究所)客員研究員、帝京大学で教鞭を執る。著書に、『デリスキング下の北東アジア経済』(共著)文眞堂、2024年、『ポスト「冷戦後」の韓国・北朝鮮経済』(共著)同、2023年など。 

必ずしもそうではない。韓国の内政混乱を統一へ導くための戦争というのは、かつての金日成主席や金正日総書記の時代の統一戦線戦術や祖国統一論によるものであって、これは最近まで朝鮮半島専門家の中では主流の意見だった。

しかし、現在の金正恩政権は、まずは自国の安定と体制強化を軍事・経済分野で図ることを優先している。戦争が自分たちに仕掛けられれば打って出るという可能性はある。

とはいえ、アメリカや韓国が軍事的攻撃をしない限り、その対応は準備(核兵器・ミサイル)はするが、自ら韓国に打って出て占領・統一を図ることは時期尚早と判断しているからだ。

すなわち「敵対する2国間の対立を維持」へ北朝鮮が路線変更したことが、戦争勃発の可能性を低くしていると言える。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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