
「第三者の調査によって被害の一部が認められたにもかかわらず、裁判では認定結果を反故にし、私個人の問題にしようとしている」
そう憤りをあらわにするのは、東映でアシスタントプロデューサーとして勤務していた元社員の女性Aさんだ。セクハラやその後の会社側の対応などが安全配慮義務違反だとして、東映に対し損害賠償を求める訴訟を2023年12月に起こした。
東映は第三者の調査で認定されたセクハラについて「損害賠償により慰謝しなければならない違法性を有する、あるいは精神疾患の発症に関係するセクハラとは認められない」と主張している。
そのうえ、裁判において東映は、体に触れてきたセクハラ加害者を擁護し、「警察の人に言わせるとね、気を遣っている返答が相手の想像をふくらませちゃったみたいだよ」とAさんに落ち度があるかのような言動をした相談窓口の対応を容認している。
東映が昨年12月に提出した準備書面には次のように記されていた。
「(手を握る行為は)思いやっての行為である可能性も十分考えられる」「『頑張ろうねという意識』で肩に触れた可能性も十分考えられるにもかかわらず、なぜにすべて極めて悪い方向に捉えるのか理解に苦しむ」
「(相談窓口の社員は)原告(被害者)の責任であると断定しておらず、あくまでの要因の一つの可能性として発言したのに過ぎない」
手を握ったり執拗に連絡したりしてくる
訴状などに示された裁判に至るまでの経緯はこうだ。
Aさんがセクハラを受けたのは、新卒で入社した年の2019年12月から2020年2月にかけて。現場研修として『相棒』などの制作に携わっていた時期だ。加害者はフリーランスの中高年男性スタッフであるBとCだった。
Bは、深夜の撮影中に「寒いね、こんなぶかぶかの手袋だと温まらないでしょ」と声をかけてきた。そして手袋の上からとはいえ、Aさんの手の甲を手のひらで包み込むように、指と指の間に指をかけてぎゅっと握ってきた。
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