
槌音が響く銀座一丁目交差点。ヒューリックが建て替えを進める12階建てのビルが8月に竣工を迎える。高層階に開業する高級旅館「ふふ」には全部屋に天然温泉が引かれ、都心にいながら非日常を楽しめる。
このビルの竣工を待ち望んでいるのは、事業主のヒューリックや旅館の宿泊客だけではない。「東京メトロ」も待ち焦がれていたことだろう。なぜなら、新ビルには有楽町線銀座一丁目駅から地上に直通するエレベーターが設置されるからだ。
銀座一丁目駅には、地上に上がるためのエレベーターやエスカレーターがない。どの出口を利用しようにも、最後は階段を上るか階段昇降機を使う必要がある。こうした駅は東京メトロ全駅を見渡しても、日比谷線八丁堀駅のほかには銀座一丁目駅だけだ。
どうにかエレベーターを設置できないか。東京メトロが考えた末に講じたのは、自ら土地を取得して駅直結のビルを開発することだった。少なくとも15年前から動き出したこの計画は、さまざまな苦闘を経て、ひょんな形で花開くことになる。
駅直結ビルを自前で開発
銀座一丁目駅の開業は1974年。ホームから改札口に向かうエレベーターはあるが、地上部に向かうエレベーターは今に至るまで存在しない。「地上の道路幅員が広くなく、種々の地下埋設物・用地確保等の課題があった」(東京メトロ)ため、エレベーターの設置場所を確保できなかったのだ。
とはいえ、バリアフリー化の必要性は年々高まる。国土交通省はかねて、主要駅にエレベーターなどを設置して段差を解消するよう求めてきた。 銀座一丁目駅の利用者数は優に3万人を超えていたが、バリアフリー化は途上だ。そこで東京メトロは、駅直結のエレベーターを備えたビルを自ら開発することにした。
最初に動き出したのは2011年。冒頭の旅館ふふが入るビルと道路を挟んだ向かいに位置する土地を取得した。銀座一丁目駅改札のほぼ真上に位置し、エレベーターの設置場所としては打ってつけだ。
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