
2025年6月、今後の国際情勢の行方を占う2つの大きな外交イベント、先進7カ国首脳会議(G7サミット)とNATO(北大西洋条約機構)首脳会議が開催された。ウクライナ情勢の観点から、2つの会議で何があったのか。そして今後の焦点として何が浮上してきたのか。深掘りしてみた。
G7サミットは、初日でトランプが離脱し、包括的な首脳宣言の採択を断念。ウクライナに関する声明も出せず、キーウ側にとって成果ゼロの結果に終わった。これと対照的に、ハーグでのNATOサミットはゼレンスキー政権にとって、いくつか心強い、前向きなポイントがあった。
NATOサミットで話し合われたこと
それを以下に箇条書きにしてみよう。
➀トランプも同意したサミット首脳宣言は「深刻な安全保障上の脅威と試練、とりわけロシアによる長期的な脅威に立ち向かうため、NATO加盟国は2035年までに国内総生産(GDP)比の5%を中核的な防衛費と軍備関連費に投じる」とうたった、②宣言はウクライナの安全保障を高めることがNATOの安全保障に寄与すると宣言した、➂NATOは防衛費拡大の一環として、ウクライナ防衛と軍需産業に対し、直接的に支援することも明言した、である。
➀の防衛費5%への引き上げ目標は、アメリカとヨーロッパの軍事費負担の不公平解消を強く主張するトランプが要求していたもの。ヨーロッパにとって、各国の防衛費をGDP比2%とすることがこれまでの目標だったが、今回のサミットでは、トランプ政権のNATOへのコミットを確保するため受け入れた。これが実現すれば、アメリカとヨーロッパNATOの防衛支出割合水準はほぼ同じになる。
しかし、今回の5%引き上げ目標が単にトランプをNATOにつなぎ留めるための窮余の策だったかというと、それだけではない。4年目に突入したウクライナ侵攻を受け、プーチン・ロシアのヨーロッパへの軍事的脅威がさらに高まっているというNATOの深刻な危機感を反映したものだ。
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