北朝鮮が韓国の「戒厳令・弾劾」にとても冷静な理由 専門家に聞く・金正恩政権の政策変化が影響か

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2023年までは「南朝鮮」または「傀儡南朝鮮」と表現していたが、その後2024年1月に北朝鮮が南北関係を「敵対する2つの国家関係」と規定したことが変化のきっかけだと考えられる。「傀儡」という表現は、戦後から現在まで北朝鮮が韓国に対しアメリカの植民地政権だと批判する際に数十年使っている表現だ。

――2024年にも『労働新聞』では、韓国の軍事面での対北朝鮮政策や北朝鮮の住民向けのビラ散布に対して「論評」を出して強く避難することがありました。

しかし、韓国の内政については『労働新聞』は2019年10月17日から同月20日まで4日連続で「情勢解説」を掲載したのが最後だ。ここでは、韓国で行われていた「ろうそくデモ」を取り上げた。現在の与党「国民の力」に通じる当時の「自由韓国党」の解体を掲げ、韓国民衆の闘争を煽る記事を出した。それから5年間、韓国の内政については「説明報道」のレベルでとどまっている。

韓国を強く非難する報道は最近ではまれ

――「敵対する2つの国家」としながらも、韓国側を強く批判する報道は2020年以降、していないという意味ですか。

当然、「傀儡韓国」という表現は敵対しているという意味が含まれている。しかし先に示したように5年間、韓国の内政に関する北朝鮮の意見や主張は出ておらず、韓国で発生した事件や事態を説明する報道にとどまっていることも事実だ。

――これまで北朝鮮による韓国向けの報道には、具体的にどのような特徴がありましたか。

先に示した内容を含めて、韓国が北朝鮮を対象に何らかの行動をしたら、それに関して激しい批判を「論評」などで報道する。韓国の内政では、反政府の野党や市民団体の活動を紹介する。また、海外の世論を紹介する。

韓国への内政介入的な報道は、先に示した2019年10月20日付『労働新聞』に掲載された「情勢解説:ろうそく集会を通じてみた南側の民心」が最後。この解説記事の最後は、「怒る人民たちの大衆的抗議は再度政権に就くという夢を見ている南朝鮮の保守逆賊無頼を破滅の陥穽に押しやることになるだろう」というものだった。

加えて、2020年以降に韓国への内政介入的な報道が論評として出ない理由は、新型コロナウイルス感染症の流行による非常事態体制に入ったという状況、2021年1月に開催された朝鮮労働党第8回党大会での党規約改正、すなわち南朝鮮革命を意味する用語を削除したことなどの影響があったと考えられる。

――南で起きた事件・事態の説明にとどめるという報道は今後も続きそうでしょうか。

前述したように、2020年以降の流れからすれば内政介入的な強いトーンでの報道は出ていない。例えば、2022年10月にソウル・梨泰院で多くの若者が圧死したときに大統領の責任を問い退陣を要求する集会が行われたが、このときも内政介入を臭わせるような一切の言葉はなかった。

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