
中央アジアにある人口2000万人の国、カザフスタン。天然資源に恵まれ、石油やガスのみならず、さまざまな鉱物の宝庫である。そのカザフスタンに今、欧州連合(EU)が急接近している。化石燃料の脱ロシア化を図るEUにとって、世界有数の資源国であるカザフスタンは、ロシアに代わる有力なエネルギー供給源になりえるからだ。
目立ち始めた欧州におけるカザフスタンの存在感
実際、EUの原油輸入量に関して、ロシアからとカザフスタンからで比較をすると、2023年中頃を境にカザフスタンからの輸入量がロシアを上回っている。

カザフスタンはロシアや中国などに挟まれた内陸国であるが、同国産の原油は、コーカサスやトルコなどを通るパイプラインを通じて、EUに運ばれてくる。
EU首脳陣のカザフスタン詣でも相次いでいる。6月上旬にはスロバキアのロベルト・フィツォ首相が首都アスタナを訪問し、カシムジョマルト・トカエフ大統領と会談した。そしてフィツォ首相は、エネルギーの安定供給の観点から、パイプライン経由で輸入するカザフスタン産の原油の量を増やしたい意向をトカエフ大統領に伝えたようだ。
かねてカザフスタンは、フランスとの蜜月関係で知られていた。カザフスタンは核燃料になるウランの世界最大の生産国であるため、フランスの原子力産業にとって欠かせない存在だ。両国企業は協力してカザフスタンでのウラン生産に当たるほか、核燃料のリサイクルに関しても協定を結ぶなど、非常に深い関係を形成している。
EUでは今、脱炭素化と脱ロシア化の両面から、ドイツやスペインなどを除き、原子力回帰の流れが鮮明だ。その流れの中心にあるのが、EUの盟主であり欧州の原子力産業を一手に担うフランスだ。以前から深かったフランスとカザフスタンの関係が、ここにきてフランスを中心とするEU全体とカザフスタンの関係へ深化している。
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