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石油もガスもウランも鉱物も!「世界有数の資源国」にして「巧みな中立外交」でならすカザフスタンに欧州が熱視線を送る

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カザフスタンは、石油やガス、ウランといったエネルギーのみならず、原材料になる鉱物も豊富だ。2026年からは、ルクセンブルクの資源会社であるユーラシアン・リソーシズ・グループが、EUが重要原材料に指定するガリウムの生産を開始する。これが順調に軌道に乗れば、カザフスタンは中国に次ぐ世界2位のガリウム生産国になる。

EUは最大の顧客にして外貨獲得先

このようにEUは、カザフスタンからさまざまな鉱物資源を輸入しているが、それをさらに多様化しようとしている。逆にカザフスタンから見れば、EUは格好の外貨獲得先となる。カザフスタンの貿易収支を地域・国別に分解して確認すると、EU向けに巨額の貿易黒字が計上されており、EUがカザフスタンの最大顧客であることがわかる。

カザフスタンの巧みさは、こうした欧州との関係を維持するために、ロシアや中国とも友好関係を結んでいることにある。特にトカエフ大統領の優れた外交手腕は、ロシアとの関係に集約されている。トカエフ大統領はロシアのウクライナ侵攻を支持せず、ロシアからの派兵要請を断固として断るなど、あくまで中立的な立場を堅持する。

同時に、ロシア産品のカザフスタンを経由した欧州への輸出を容認するなど、ロシアが外貨を獲得するルートを提供し、ロシアに「塩を送る」ことも忘れない。同時に、カザフスタンは中国とも良好な協力関係を築くことで、ロシアによる過度な干渉を回避することにも努めている。つまり、ロシアに対する安全保障を確保しているわけだ。

6月17日、カザフスタンの首都アスタナで中国・中央アジア首脳会議が開催された。カザフスタンはホスト国として中国に「華を持たせる」役割を担った。カザフスタンは今や中央アジアの盟主として、他の中央アジア4カ国を束ねつつ、ロシアと中国の間で絶妙なバランス外交を展開。そして、欧州との関係をも深めているのである。

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