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親ロシア路線の過激派台頭で金融危機の一歩手前だったルーマニア、親EU派の大統領誕生で市場はひとまず安堵したが…

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5月18日、ルーマニア大統領選の決選投票で、EU(欧州連合)との関係を重視するブカレスト市長ニクショル・ダン氏の当選が決まった(写真:Bloomberg)
※本記事は2025年5月28日7:00まで無料会員は全文をご覧いただけます。それ以降は有料会員限定となります。

中東欧のルーマニアで5月18日、大統領選の決選投票が実施され、穏健派でEU(欧州連合)との関係を重視するブカレスト市長ニクショル・ダン氏の当選が確実となった。一方、第1回目の投票で首位だった、過激派でロシアとの関係を重視する極右政党「ルーマニア人統一同盟」の党首ゲオルゲ・シミオン氏の得票率も46%と相応に高かった。

もつれにもつれた昨年からの大統領選

もともとルーマニアの大統領選は、昨年11月24日に第1回の投票が行われ、泡沫候補扱いされていたカリン・ジョルジェスク氏が首位に立ったが、翌月6日、憲法裁がロシアによる選挙干渉を理由に結果を無効だと判断した。5月4日に改めて大統領選の第1回の投票がやり直されたわけだが、そこでシミオン氏が躍進した経緯がある。

この事態を受けて、翌5日に穏健派の与党・社会民主党のイオン=マルチェル・チョラク前首相が辞任を表明し、連立政権から離脱するなど、ルーマニアの政情は一気に不安定化した。この政情不安を受けて、投資家はリスクオフのルーマニア売りへ殺到した。つまりルーマニアの金融市場は、債券・通貨・株式のトリプル安に陥ったのだ。

例えば長期金利は、チョラク前首相が辞任した5月5日の終値で7.87%と、前取引日から0.3%ポイント上昇した。その後も上昇が続き、8日と9日には8.55%と、この間の最高水準に達した。投資家がルーマニアから資金を引き揚げた理由は、仮にシミオン氏が当選すれば、ルーマニアとEUの関係が極端に悪化すると警戒したことにあった。

結果的に、穏健派でEUとの関係を重視するダン氏が当選したことで、5月19日の長期金利は7.65%まで低下し、大統領選前の水準に戻った。債券市場が安定したことでルーマニアの通貨レウ(複数形はレイ)も買い戻され、5月19日の相場では終値で1ユーロ=5.0417レイと前首相が辞任した5日以来の水準までレウ高が進んだ。

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