
5月27日、欧州委員会は総額1500億ユーロ規模の再軍備計画である「欧州安全保障行動(SAFE:the Security Action For Europe instrument)」を承認した。一部報道では武器基金とも表現されるが、防衛体制の強化全般に資する制度ゆえ、「武器」と限定するのは違和感がある。
これは第2次トランプ政権のウクライナ対応を機に欧州の自衛意識がにわかに高まり、今年3月にEU(欧州連合)特別首脳会議で合意した総額8000億ユーロの「欧州再軍備計画(ReArm Europe Plan)」の一部であり、当初から8000億ユーロのうち1500億ユーロは共同債として欧州委員会が背負い、残る6500億ユーロは加盟国の予算増強で対応されることになっていた。
今回はその実行が法的に可能になるための手続きが完了したという話だ。
域内調達が条件、欧州経済を押し上げ
「欧州再軍備計画」に基づき、EUは6月24~25日のNATO(北大西洋条約機構)首脳会議に向けて防衛費支出をGDP比5%に抑制するための各種対応を進めているところであり、SAFEはEUレベルでの再軍備について金融面での支援体制を整えたことになる。
今後、欧州委員会は共同債で調達した低金利かつ長期の資金をSAFEの規定に沿って共同防衛プロジェクトに融資していくことになる。SAFEの目指すところは欧州防衛産業基盤(EDTIB:the European Defence Technological and Industrial Base)の強化であり、具体的には「欧州における防衛産業の生産能力を向上させ、必要な装備品を迅速に供給できる体制を整えること」、端的には「防衛力の強化」である。
もちろん、SAFEは欧州委員会が加盟国の信用力を源泉として資金調達を行うため、その使用条件も厳格である。あくまで加盟国が共同で防衛装備品を調達する際に適用されることになっており、具体的条件としては「少なくとも2つの加盟国が関与し、調達品の65%以上がEU、欧州経済領域(EEA)、またはウクライナから供給される必要」などが明記されている。
つまり、SAFEとして調達された資金はEU域内で拠出されるという共同調達のコンセプトが貫かれており、経済効果としては当然、域内経済の押し上げに直結する話でもある。
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