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<トランプ関税の迷走>多額のアメリカ国債を保有するEUにトランプ政権が強く出ることができないワケ

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4月初旬の相互関税発表時に見せたトランプ大統領の恫喝的な手法は大きな壁にぶち当たっている(写真:Bloomberg)

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※本記事は2025年6月4日6:00まで無料会員は全文をご覧いただけます。それ以降は有料会員限定となります。

アメリカのドナルド・トランプ大統領が4月2日に発表した「相互関税」は、4月9日に発動されたが、同日中、多くの国に対して、直ちに90日間の停止が発表された。以降、アメリカは世界各国と個別に交渉を行っているが、いずれも難航している。トランプ政権も交渉は難航すると想定していただろうが、見通しは甘かったのではないか。

トランプ政権にとって、貿易赤字の削減は政治的な約束である。3000億ドル近い貿易赤字を抱える中国に対して、トランプ政権は計125%まで相互関税率を引き上げた。5月12日には中国側と妥協策で合意したが、中国に対する相互関税率は34%を維持し、トランプ政権の面目は保たれた(ただ、34%のうち上乗せ分の24%の執行は90日間停止)。

EUは中国に次ぐアメリカ第2位の貿易赤字相手

一方で、中国に次ぐ2400億ドル程度の貿易赤字を抱える欧州連合(EU)との間では、交渉が停滞している。

業を煮やしたトランプ大統領は5月23日、EUからの輸入品に対して、6月1日から一律50%の関税を課すと自身のSNSに投稿した(本来のEUへの相互関税は20%で、上乗せ部分の10%は7月9日まで執行停止中)。

これを受けて金融市場は調整色を強めたが、EUのウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長と電話会談をした結果、トランプ大統領は50%の関税発動を7月9日まで延期すると発表し、騒動はひとまず落ち着いた。

いずれにせよ、「こちらが圧力をかければ相手は思い通りになびく」というトランプ大統領の当初の目論見は、もはや実現しないようだ。むしろ、アメリカ経済が浴びる返り血の多さに、トランプ政権自身が戦意を喪失しているようにさえ見受けられる。それだけ、自らが呼び起こしたアメリカ国債やドルに対する不信感は、政権の閣僚らにとって、衝撃的な出来事だったのかもしれない。

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