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1ドル156円の円安なら25%でも自動車メーカーは黒字…トランプ関税が「TACO」と化すまでの間、日銀「利上げ温存」なら国民生活はどうなる

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「TACO(トランプ大統領はいつもビビッて退く)」と市場は織り込み済み?(写真:Bloomberg)

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トランプ大統領は8月1日から日本に25%の相互関税を適用すると明らかにした。発動済みの基本税率10%に15%が上乗せされることになる。各国に送付された書簡は国名と首脳名、税率以外は全て同じ文面で、交渉の経緯にはまったく触れられていない。

同時に「アメリカ国内で生産するなら関税はかからない」と交渉の余地も示唆されるが、3カ月間、赤澤亮正経済財政担当大臣を中心として足しげく渡米し、交渉を重ねてきたにもかかわらず、交渉前の税率(24%)から1%ポイント高い25%で着地するという結果は「完敗」と表現せざるをえない。

とはいえ、従前指摘されているように、アメリカの主張は根拠薄弱であり、日本の交渉力不足と責めることも気が引ける。ベッセント財務長官からは「参院選が合意に向けた制約になっている」との発言も見られており、7月20日以降に事態が急遽動き出す可能性は留意したいところだろう。

自動車メーカーは1ドル156円なら25%関税でも利益

今後について金融市場では楽観ムードが漂うものの、赤澤大臣は「自動車分野での合意がなければ全体の合意はない」との姿勢を崩していないため、進展は期待できそうにない。現時点では25%が課された場合、日本の企業部門が被る影響についてラフなイメージを作っておくべきだろう。

この点、交渉決裂に合わせて円安・ドル高が進んでいることは不幸中の幸いではある。書簡公表後のドル/円相場は147円台と2週間ぶりの円安圏まで押し上げられた。このレートをどう解釈すべきか。

今年2月に発表された内閣府「企業行動に関するアンケート調査報告書」によれば、輸出企業全体の採算レートは130.1円、製造業全体では127.1円と実勢相場よりもかなり円高方向にあり、自動車を含む輸送用機器に限れば124.7円とさらに下がる。

輸送用機器を例にとった場合、156円(≒124.7×1.25)以上の円安であれば25%関税でも利益が出せるという計算になる。また、現在の146円でも17%(124.7×1.16≒145)までの追加関税ならば吸収できるという計算になるが、確かに採算割れを起こすという意味では問題はある。

ちなみに10%の基本税率であれば、137円(≒124.7×1.1)以上の円安で利益が確保できる計算になるが、これはもう過ぎた話だ。

もちろん、これらは内閣府調査を用いた簡易的なマクロのイメージにすぎず、解像度を上げていけばより精緻な評価が可能になるだろう。しかし、円安が進んだドル/円相場の水準がトランプ関税の緩衝材になることは間違いない。

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