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〈今週のもう1冊〉『前立腺がん患者、最善の治療を求めて』書評/患者を「モルモット」扱いした医師たちの歪んだプライド

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『前立腺がん患者、最善の治療を求めて 医師と挑んだ大学病院との闘い全記録』出河雅彦 著
前立腺がん患者、最善の治療を求めて 医師と挑んだ大学病院との闘い 全記録(出河雅彦 著/梨の木舎/2420円/256ページ)
[著者プロフィル]出河雅彦(いでがわ・まさひこ)/ジャーナリスト。元朝日新聞編集委員。1960年生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業。著書に『ルポ 医療事故』(2009年「科学ジャーナリスト賞」受賞)などがある。
さまざまな分野の専門家が、幅広い分野から厳選した書籍を紹介する。【土曜日更新】

医療技術は日進月歩だ。外科手術の場合、従来の術式よりも治療成績のよい手法が登場すると、次第にそちらが主流になっていく。がん治療であれば、再発率が低く身体合併症の少ない方法を患者が選ぶのは当然で、昨今は術後の傷の大小も治療選択の重要な要素になっている。

とはいえ、腕に自信のあるベテラン外科医が、時代に合わせて手術の方法を大幅に変えることはあまりない。反対に、己の手術を正当化したいあまり、新たな術式を見下し軽視する言動に走ることがある。本書が扱う問題の根底には、大学病院を統べる医師たちの歪んだプライドやメンツがあったのではないか。もちろん、そんなことで患者の命が脅かされてはならない。

本書は2010年代後半、患者たちが滋賀医科大学医学部附属病院の泌尿器科教授らに対し、「最善の治療を受ける機会を奪うな」と訴えて民事訴訟などを起こした戦いの顛末を、裁判資料などを基に詳細に記している。

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