会社の売り手と買い手を見つけ出し、マッチングすることで手数料を受け取るM&A仲介業界。実績を上げるには多くの売り手候補と買い手候補を見つけ出すことが重要なため、テレフォンアポインター(電話営業)やダイレクトメールなどを活用して、中小企業オーナーに積極的な営業を行うことで知られる。
「当時はこれが普通なのかなと思っていたが、いま考えると非常に問題のある構造だったと思う」――。
そう漏らすのは、かつて学生時代に、あるM&A仲介会社でインターンを経験したX氏。「問題のある構造」と指摘するのは、そこで任された仕事内容だ。インターン初日に簡単な研修を済ませると、2日目以降は中小企業にひたすら電話をかける「テレアポ業務」に従事したという。
X氏は「席に着くと営業先のリストと台本が机に準備されており、1社ずつしらみつぶしに電話をかけた」と当時を振り返る。さらに「社内のテレアポ担当者のうち9割がインターンの学生で、営業はインターン依存の構造だった」という。
大量のテレアポインターン募集
2024年に「悪質な買い手」による詐欺的なM&A仲介問題が露呈したように、会社の売買を手がけるM&Aではトラブルが発生しやすく、高い知識と経験が要求される。そうした中で、表向きは顧客に対して「一生に一度の特別な選択」とうたいながら、専門知識を持たない学生が中小企業オーナーに会社売却を勧めるというM&A仲介会社の裏の顔が浮かび上がる。
インターンにテレアポを任せているのは、X氏が勤務した会社に限らない。東洋経済がネット上のインターンの募集サイトなどを調べたところ、少なくとも30社近くのM&A仲介会社がテレアポ業務でのインターンを募集(注:すでに停止した会社を含む)していたことがわかった。
業界大手のM&A総合研究所のほか、24年にチェンジホールディングス傘下となったfundbook、M&Aロイヤルアドバイザリーなど、ダイレクト営業を武器に近年になって急成長を果たした会社が多い。中には三井住友信託銀行の持ち分法適用会社である経営承継支援なども含まれる。
M&A総合研究所については、東洋経済が同社に対しインターンの運用体制等に関する質問を送った後に突如募集が停止されている。質問への回答は後述するが、会社は「昨今の情勢を鑑み、不適切な事例と混同されることを避けるため」としている。



















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