――ルシアンHDによるM&Aトラブルをどのように受け止めましたか。
M&Aを使った詐欺的で悪意のある行為が出現したということにショックを受けた。それと同時に、来るべきものが来たとも感じた。M&Aが業界として注目されれば、それを悪用しようとする人もいる。より身を引き締めて対応策を考えていかなければいけない。
――「来るべきものが来た」とはどういうことですか。
M&Aは少し前までプロフェッショナルの領域だった。仲介会社の数が少なく、金融機関経験者や会計士、弁護士などが担い手の中心で、買い手と売り手もM&Aをよく理解していた。そもそもM&Aに対する精神的なハードルが高く、企業側も慎重だった。
それが今では、後継者不在を背景とするM&Aニーズの急拡大によって、かなり一般化した。ニーズが増えたことで仲介会社の数が激増し、中小企業庁の登録事業者だけでも600社以上ある。
さらに仲介会社から(売却などの意向に関する)電話や手紙を毎日のように受けることで、企業側も「M&Aは一般的なのかな」という認識になる。M&Aの裾野が広がったことで、この状況を悪用する人が出てきてもおかしくないだろうと感じていた。
ただ、ルシアンHDのように、最初から現預金を引き抜く目的でM&Aを行う極めて悪質な買い手が出てくるとは想像もしていなかった。
最初のチェックでは「見抜けていない」
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