「給料泥棒」「お前はクビだ」「死んだ方がましや」
絶大な人事権を持つ代表取締役会長が、過大な予算目標をトップダウンで割り当て、未達の場合に冒頭のような言葉で役職員を激しく叱責。現場は架空売上・架空在庫の計上や費用の先送り、減損の回避など不適切会計に手を染めた。
社長や管理部門の責任者などマネジメント層が不適切な会計処理への関与、または黙認をしていた。内部統制の要である監査室室長に至っては、損失処理の先送り案の策定に加え、監査法人に発覚しないような隠蔽の示唆や提案を行っていた。
これは東証プライムに上場する産業ガス大手、エア・ウォーターの特別調査委員会の調査報告書に記された事柄だ。少なくない読者が別の会社を思い浮かべたかもしれないが――。
同社は、2025年7月、連結子会社で在庫を巡る不適切な会計処理を発見。その後の社内調査で本社・グループでも問題が判明した。弁護士など外部専門家で構成される特別調査委員会を設置し、ヒアリングやデジタル・フォレンジック調査を進めてきた。
調査委に対する調査妨害も
2月13日に開示された調査報告書は最終版ではなく、2月9日時点までのものだが、大方の予想を超える内容だった。調査報告書では、本体を含むグループ21社において不適切な会計処理が行われていたことを認め、トップを含めた経営層の責任を厳しく指摘している。
さらに、自主点検によって不適切会計は37社まで拡大。現時点で過去5年にわたる決算修正額は、調査委分が売上高で257億円、営業利益で76億円、自主点検を含めると売上高で667億円、営業利益で332億円の及ぶ。
また、調査委に対する虚偽・不正確な説明、事後的な書類の作成/偽造、データ改ざん、ヒアリング対象者間での情報共有など、「調査妨害というべき行為が行われた」と記されている。調査中にも売上計上を前倒しするための書類偽造などが判明するなど、「供述の信用性や資料の真正性に対する懸念を完全に払しょくしたとまでは言い切れないと考えている」とまで断罪されている。




















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