医療界の"嫌われ者"が暴く、がん「エセ医療」の罠 『がん「エセ医療」の罠』岩澤倫彦氏に聞く

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『がん 「エセ医療」の罠』著者の岩澤倫彦氏
[著者プロフィル]岩澤倫彦(いわさわ・みちひこ)/ジャーナリスト。1966年生まれ。報道番組ディレクターとして救急医療、脳死臓器移植などのテーマに携わり、「血液製剤のC型肝炎ウイルス混入」スクープで新聞協会賞、米・ピーボディ賞。近年は東京女子医科大学事件、国立循環器病研究センター論文不正問題を報道(撮影:尾形文繁)
命を左右するがん治療の中に、科学的な根拠のないものが紛れ込んでいる。「がんが消えた」などのうたい文句で高額な自由診療に誘導し、患者から治療費を吸い取る「エセ医療」。本書には、エセ医療を信じて標準治療から離れ、命を落とす患者も登場する。エセ医療を行う医師、被害に遭った患者と家族を丹念に取材してきた著者に話を聞いた。
がん「エセ医療」の罠 (文春新書 1456)
『がん「エセ医療」の罠 (文春新書 1456)』(岩澤倫彦 著/文春新書/1210円/280ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──エセ医療を信じる患者の説得を試みたこともあったとか。

患者の家族や友人に頼まれて、関わったことが何度かあります。

早期乳がんの女性は、手術によって97%の確率で完治できると診断されたのに、温熱と食事を組み合わせた自由診療を選択しました。その治療で「がんが消える」という医師の言葉を信じたからです。

女性の夫から相談を受けて、「自由診療には根拠がない」と伝え、外科手術を受けてもらおうとしましたが、女性はまったく耳を貸そうとしません。手術や抗がん剤治療に強い恐怖心を抱いていたのです。

このようなとき、エビデンス(科学的根拠)を示して説得しても、感情には響かないとわかりました。

約2年後、遠隔転移して女性は亡くなりました。

がんと診断されると冷静さを失って、合理的な判断ができなくなります。だから、がんになる前にエセ医療を知ってもらいたい。

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