
ヴァンス副大統領のアドバイザーとしてメディアに登場することが増えているオーレン・キャス氏は、「American Compass」というシンクタンクをたった2人で立ち上げ、現在も6人で活動している。そして「Understanding America」というブログで、そのアメリカが抱える問題と不満について、論拠となる論考を示しながら、綴っている。
彼の論文は、理論モデルと計量分析による形式をとってはいないものの、議論そのものは正統的な経済学に基づいた論旨を展開している。彼の主要な論点は、理不尽とは言えない。そして、彼の議論が論拠として取り上げている事象については、経済学の研究の蓄積の中で実証分析による論証が行われているものもある。
4月上旬に世界を揺るがしたトランプ政権の関税政策は、国際経済体制への不満の表明である。現在のWTO体制があるタイプの「市場の失敗」を補正できていないことからくる不均等は確かに存在する。これを修正することで、自由貿易体制を支えてきた通商ルールをアップグレードすることは必要だ、と筆者は考える。
キャス氏「1980年代の日本の輸出自主規制が理想形だ」
トランプ関税が発表された直後の4月5日に更新されたUnderstanding Americaで、レーガン政権が日本から引き出した輸出自主規制(VER)が「アメリカン・カムリ」(トヨタがアメリカで大ヒットさせた乗用車)を生み出したエピソードからスタートしている。強いレーガン政権が日本のアメリカ投資を誘発し、それがアメリカメイドの製品をつくり雇用を生み出した流れは、トランプ政権の関税政策が想定するもっとも美しいもの、と書いている。
そのうえで、次の3つの点を議論している。
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