
アメリカと中国は、第2次トランプ政権になって初めての閣僚級貿易協議を5月10・11日にスイスで行った。翌12日には、両国が互いに課した追加関税をそれぞれ115%引き下げるという電撃的な合意をしたことが発表され、世界に衝撃を与えた。
アメリカが中国に課す関税率はそれまでの145%から30%に、中国がアメリカに課す関税率は125%から10%へとそれぞれ引き下げられた。ただし、アメリカが中国に課した相互関税の上乗せ分である24%の引き下げは、90日間の一時停止措置とされた。トランプ大統領は即座に、「中国はアメリカの企業に対し市場を開くことに合意した」と、米中合意の成果を世界に誇示した。
米中が意図しない形での100%超え
トランプ政権は今年3月までに、合成麻薬フェンタニルの取り締まりが不十分であることを理由に、中国からの全輸入品に一律20%の関税を課した。それに加えて4月には、相互関税34%(一律部分10%、上乗せ部分24%)を中国に課したのである。
この時点で追加関税の合計は54%で、それ以外に自動車、鉄鋼・アルミニウムの分野別関税が課されていた。合計水準は、トランプ大統領が大統領選挙時に公約としていた対中追加関税60%におおむね沿ったものだった。
ところがその後、両国間の関税率は意図しない形で100%を超える極めて高い水準まで上昇した。相互関税に対して、中国が予想外の強硬姿勢を見せ、両国間で報復関税の応酬が起きたためだ。トランプ大統領にとってまったくの誤算だっただろう。極めて高い米中間の関税率は、両国の経済に大きな打撃を与える。我慢比べの状況が続いたが、それでも中国が強硬姿勢を崩さなかったことにしびれを切らして、アメリカ側が先に協議を呼びかけたものと考えられる。
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